82話・ボンヤリとした「災害」
眼前の森を見ながら、レ二ズは愚痴を溢した。
「森の『向こう』って、えらい抽象的だよな」
彼(レ二ズ)とは逆に、真面目なワイズ。
「あのお方の予言だぞ。間違いない」
その「予言」とは、ほんの2日前…
シュタハスが、モンスターたちを集結させ、行った「演説」のことだった。
演説の内容は、「森の向こうから、災害がやってくる」という警告。
そして、この「災害」の対策会議でもあった。
まずは…最初の砦、第一の防衛ラインが、シュタハス神殿に決定する。
だが、しかし…レ二ズの文句通り。
「森の向こう」という表現は、情報量に欠けている。
だって、この神殿の周りは、森に囲まれているのだ。
ゆえに「災害」とやらが、どの方角からやってくるのか?
ハッキリしないと、作戦の展開だって難しい。
そして、何よりも…
「災害」と言うだけで、どんな内容かさえ、教えて貰えなかった。
このように「怪しい点」が多いことから。
シュタハスに対して、モンスターたちは、不信感を抱いている。
どちらかと言うと、ワイズのように、心から信じる者は少ない。
だとしても、モンスターたちは、創意工夫をしながら。
それぞれ役割分担して、神殿の防衛に励んだ。
モンスターたちは「二つのチーム」に分かれて、作戦を展開していく。
森の奥に進行する「偵察隊」のメンバー。
彼ら(偵察隊)の目的は、「災害」の正体を明らかにすること。
そして、もう片方は「防衛隊」のメンバー。
このチームに、レ二ズとワイズがいて、防衛の名の通り。
シュタハス神殿を、護ることが目的となる。
防衛隊のメンバーは、お留守番をしながら。
ザワめく森を、退屈そうに監視している。
ぼーっとしている内に、レ二ズは、ふと思いついた。
「あ!研究所!」
その何気ない閃きを、ワイズが冷静に否定する。
「そこ(研究所)は、下らない研究をしているんだろ?何の脅威でもないさ」
確かに、ワイズの言う通り。
開花の森にある、人間の領域「研究所」では、意味不明な研究が行われている…だけで。
モンスターたちは皆、研究所なんて、脅威にすら思っていない。
ゆえに、彼(レ二ズ)の予感は、的外れのようだが…
この「研究所」に、レ二ズは、むず痒さを感じていた。




