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81話・名前を貰った日


 モンスターたちの意識が、黄金の瞳に奪われる。


烈火のドラゴンは、ゴクリと息を飲み、恐る恐る口を開いた。

「しゅ、シュタ…ハス?本物なのか?」


 そう訊かれて、少女は、ドラゴンへ視線をやった。

不思議な眼差しに、緊張してしまう、烈火のドラゴン…


この感覚は、恐怖感でも、威圧感でもない。

モンスターだけが分かる(感じる)、異質な感覚。


ゆえに、彼ら(モンスター)の本能が、嫌でも結論を導いた。


この少女が。

     この白髪の少女こそが。

               「シュタハス」そのものだと…


 モンスターたちは、膝を落とし、頭を垂れてゆく。

たった一人、シュタハスに、敬意を払うために。


先ほど煽っていたオークたちも。

彼女の正体を察すると、すぐに頭を下げた。


時が止まったかのように、辺りが静まり返る。


 スライム、ゴーレム、オーク、そしてドラゴン。

ありとあらゆるモンスターたちが、たった一人の少女に、頭を下げていた。


そんな、張りつめた空気の真ん中で…


「えぇ、と」


シュタハスは、オロオロしながら、焦っているみたいだ。


「ふぅ…」

そして、緊張を払うように、一つ呟いてから。


「まだ、序章だから。肩の力を抜いて…ね?」

ゆっくりと言葉を綴り、やんわり微笑んでみせた。


今日、この日。

『再生の主』シュタハスが、森の片隅にて降臨した。



 今後、モンスターたちの価値観が、大きく変わる事となる。

シュタハスの教えは、彼ら(モンスターたち)の価値観を拭い去り。


シュタハスの口から。

「一人一人のモンスター」が、自分だけの名を授かった。


名前を得ること…

それは、モンスターという枠から出て、世界の一人になった証。


モンスターたちは、名を持つと同時に、「命を奪う」無意味さを知った。


そして、形は様々だが、「夢を持つ」と言う。

モンスターらしくない、目標を持ち始めた。




 灰色のゴブリン…レ二ズは、自分の名に不満がある。


勿論、彼(レ二ズ)の名前も、シュタハスから貰ったのだが。

彼よりも先に、相方の巨大クモが「ワイズ」と呼ばれ。

それから、ついでと言わんばかりに「レ二ズ」に決まってしまった。


まあ、モンスターの人口は、軽く千を超えている為。

彼女シュタハスが、適当になるのも、仕方がないのだが…



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