80話・ドラゴンはロリコンだった?!
氷結のドラゴンの背から、少女の声がした。
「ふぅ、終点かしら?」
その声は、小さな鈴のようで、不思議な柔らかさがあった。
氷結のドラゴンは、「はい」と一言だけ答えて、また黙り込む。
そして、その声の主が、ピョコリ…と頭を出した。
現れたのは、白い髪をした少女だった。
白髪の少女は、軽くジャンプすると。
裸足のまま、水浸しの床へ、着地しようとする…が。
床に降りた途端、ビシャッと、足を滑らせてしまった。
「ふうっわあ!」
派手に転んで、彼女(白髪の少女)が、声を上げた。
すると、その間抜けな声に。
周りのモンスターたちが、気がづいたようだ。
「人間のガキか?」
「少女を誘拐とか…ロリコンドラゴンじゃん」
そう、彼ら(モンスターたち)の言う通り。
氷結のドラゴンが、持ち帰ってきたのは、たった一人の少女だった。
透き通る白髪に、二本のアホ毛。
首まで届く程度のショートヘア。
それに、癖っ気の強い髪質。
その小さな体に、グレーのローブを羽織っており。
このローブでさえボロボロで、お粗末な格好だ。
少女の姿を見て、皆が、クスクスと嘲笑う。
「ママが恋しいでしゅね~」
「ほらあ、食べちゃうぞお」
数体のオークが、馬鹿にしながら、少女に近づいてゆく。
だが、しかし…白髪の少女は。
オークに囲まれようが、眉一つも動かさなかった。
そして、ゆったりと、立ち上がってから。
「ふぅえ~濡れちゃった」
自分の服が、濡れたことに、リアクションをする。
その「眼中に無い」という、彼女の反応に、イラつくオークたち。
オークの一人が機嫌を害し、ゴツイ手を、彼女にのばした。
オークの手が、迫ってきた時。
白髪の少女が、モンスターたちへと、視線をやった。
瞬間…
オークたちは勿論、モンスター全てに…
不思議な圧力が、圧し掛かってきた。
彼ら(モンスターたち)は、緊張のあまり後ずさった。
キラリ…と輝く、黄金の瞳。
その瞳を見て、モンスターたちは、嫌でも自覚してしまった。
この少女が、異次元の存在なのだと。
千体以上ものモンスターたちが、たった一人の少女相手に緊張している。




