79話・沈黙と氷結のドラゴン
この者こそ「沈黙と氷結のドラゴン」そのもの…
かつて、烈火のドラゴンと共に。
世界を震え上がらせた、鬼神の一つ。
氷結のドラゴンの到着に、烈火のドラゴンが駆けつけた。
烈火のドラゴンは、真剣な視線で、友(氷結のドラゴン)の着陸を待つ。
次第に、氷結のドラゴンの姿が、みるみる映し出される。
白と青の鱗。
光沢を放つ、氷の翼。
その全身が、ひんやりとした冷気に覆われている。
そして遂に、氷結のドラゴンが、竜の眼に降りてきた。
彼(氷結のドラゴン)が、降りると同時に、冷たい水が飛び散って。
足元が一面、水浸しになる。
氷結のドラゴンの帰還に、静まり返るモンスターたち。
皆の視線が、氷結のドラゴン、一か所に集まった。
烈火のドラゴンが、代表するよう、短く訊ねてみた。
「シュタハス…は?」
ざっと見たところ、氷結のドラゴンは、何も持っておらず。
丸腰で帰ってきたのは、一目瞭然だった。
氷結のドラゴンが、手ぶらで帰ってきた事に。
モンスターたちが、ブーイングを飛ばしてくる。
「シュタハスが、降臨しただァア?!」
「妄想も大概にしとけ!トカゲ野郎」
「脳ミソまで、凍ってんのか!カス!!」
モンスターたちは皆、氷結のドラゴンに、罵詈増音を浴びせてゆく。
このように、友が罵られる様を…
烈火のドラゴンは、苦々しく見る他になかった。
一方、氷結のドラゴンは、沈黙を貫きながら。
ひたすら、罵声を浴び続けていた。
モンスターたちは呆れて、次々とこの場(竜の眼)を去ってゆく。
だが、そのとき。
氷結のドラゴンの背中から。
ヒョコリと…二本の「アホ毛」が、顔をだした。




