76話・破壊のドラゴンが壊された日
破壊と烈火のドラゴンが、舞い戻ったことにより。
モンスターの士気が高まってゆく。
「やれぇ!フラム!」
「ソイツのデカ尻に、本当の『破壊』を、かましたれぇえええ!」
モンスターたちは、一丸となって、声援を送り続けるが。
ゴブリンのレ二ズだけは、苦々しい表情だった。
「そんな首で、戦えるのかよ…」
彼(レ二ズ)は、吐き捨てるように言うが。
確かに、その通り…
首元の傷のせいで、フラムは「ブレス(大技)」は使えない。
ゆえに、フラムの選択肢は、物理的な攻撃しかなかった。
よって、「直線的な攻撃」など。
相手(水の巨人)からすれば、いいカモでしかない。
巨人の目前まで、フラムが接近したとき。
水晶の掌を、ハエをあしらうよう、軽く払ってみせた。
まるで、害虫を払うような仕草。
しかし、他者にとっては、凄まじい衝撃そのもの。
大地のような掌が、フラムに襲いかかり。
ドガァ!
一発の衝撃音と共に、破壊と烈火のドラゴンを、殴りつけた。
たった一撃の攻撃により、フラムは「行動不能」に陥り。
クルクルと回転しながら、雑巾のように落ちてゆく。
そして、鈍い音を立てながら。
フラムは、頭から墜落していった。
地に埋もれる、最強のドラゴン(フラム)…
切り札があっさり敗れて、唖然とするモンスターたち。
水の巨人は、モンスターたちから、視線を外すと。
水晶の目玉を、収容所の洞穴に合わせた。
その視線からは、意図は感じられない。
だが、しかし…
何故だか、その姿(水の巨人)は、「誰か」を待っているように見える




