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73話・シュタハスの正体


 ワイズは、脱出に成功すると。

揺れる地面の上に、二人(白髪の少女とアントス)を降ろした。


こちらの到着に、外の連中も気づいたらしく。

ゴブリンのレ二ズが、少女の脱出に気づいて、駆け寄ってきた。


「ワイズッ!『シュタハス』を連れて、逃げろ!」


慌ただしく、レ二ズが警告してくるが。

ドシンッという、岩が落ちる音に、掻き消されてしまった。


 その衝撃音はまさしく、アントスたちの頭上。


白髪の少女とアントスは、ゆっくり視線をあげると。

そこには、巨大な水晶の壁があった。


いいや、違う…これは、壁などではない。

紛れもなく、人型の巨人そのものだ。


水晶の塊は、山の如く広大。

そして、頭が天まで届くほどのスケールを持つ。


「水の巨人」は、モンスターや人間などの群衆を、ざっと見渡す。


あまりにも、格が違う存在に。

人々(兵士たち)は震えがり、モンスターたちも動揺していた。


 巨人の視界は、キョロキョロと、動き回っており。

どうやら、「探し物」をしているらしい。


ワイズは密かに、少女の元へ詰め寄ると。

彼女を再び、背中に乗せようとした。


「さあ、乗って。急いでください」

そう言われるまま。

少女は静かに、背に乗ろうとするが…


 このとき…

巨人の瞳と、少女の瞳が、偶然にも重なってしまう。


その黄金の瞳を、水の巨人が察すると。


山のような図体が、紐解かれたように動きだす。


そして、大きな手を伸ばしてきて。

いとも簡単に、あっさりと、白髪の少女を拾い上げた。


「えッ?」

自分(白髪の少女)の体が、急に持ち上げられてしまい。

少女も、キョトン、とした様子。


 彼女が捕まり、動揺するモンスターたち。

だが、その中でも、ワイズが一番、精神的ダメージを受けてしまう。


こんなにも、彼女の近くにいたのに。

一寸たりとも、守ることができず…ただ、見ているだけだった。

そう考えると、ワイズが落ち込むのも、無理はない。


白髪の少女は、巨人の手の中。

遥か上方へと、捕らえられてしまう。


ゆえに、地上からでは、触れることすらできない。


もし、この現状を、打破できる者がいるのなら。

それは、空を飛ぶ者だけ…


 アントス自身も、事の展開は理解している。

だが、彼女を助けるため、ここまで力を注いできたのだ。

おめおめと、諦める訳にはいかない。


「ワイズ!何か、ないのかッ。何か…」


懸命に声をかけても、その熱意は空回りしており。


ワイズは、呆然としたまま、虚しく呟いていた。


「シュタハスが捕られた…彼女が『くれた』のに」


そのブツブツという、独り言に。

アントスはどこか、違和感を覚えた。



レ二ズとワイズ、二人揃って…

白髪の少女にむかって「シュタハス」と口にした。


『シュタハスって?何を、指しているんだ?』


黙々と流れる思考が、一つの結論に辿り着く。


『もしかして…誰かの、名か?」


この閃きと同時に。

彼女(白髪の少女)の…黄金の瞳を、自然とイメージされてゆく。


まさか、彼女の正体…は?



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