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66話・主人公は皆の権利


 白髪の少女は、穏やかな表情のまま。

少年の頭を、優しく撫でてあげていた。


だが、アントスの方は。

彼女のボロボロな姿に、驚きを隠せなかった。


「重傷じゃないか!早くッ」

手当を…と、言おうとしたとき。


白髪の少女は、口に人差し指を当て…

アントスに、静かにするよう促した。


もう、少年の吐息は、聞こえてこない。

ただ安らかに、彼女の腕の中で、深い眠りへと誘われてゆく。


彼女は、花を愛でるように、少年の頬を撫でてあげると。


「おやすみ」


一言、短く囁いてから。

冷たい床の上に、少年を寝かせた。


 そして、静まった少年から、視線を外すと。

ヨロつきながら、ゆっくり立ち上がった。


黄金の瞳が、アントスを、じっくりと見上げてくる。

その視線はまるで、鑑定しているようだ。


彼女の恰好は、全身血だらけで。

ズタズタに裂かれたローブに、グッショリと、血がこびりついている。


だが、体の傷は、全て塞がっており。

噛み千切られた、肩やお腹、首などの部位が、完全に再生(治癒)していた。


床にある血痕は、彼女のモノに違いない。

なのに、その表情は、ケロっとしている。


その上、今現状…辺りは、毒ガスまみれなのに。

この女の子は、顔色一つ変えはしない。


 こんな異例(彼女)を前にして。

アントスは少しだけ、畏怖してしまう、が…


不思議と、彼女から「危険」は、感じられなかった。


アントスは、ガスマスクの中から、黄金の瞳と視線を交わす。


「迎えにきた…ボクは、戦士でも、勇者でも、無いけれど…」

一切の偽りなく、正直に言う。


「ふぅ…」

白髪の少女は、鈴のような声で、一息つくと。


馬鹿正直な男へ、柔らかく微笑んだ。


「うん、そうだね」


「でも…ね」

穏やかに、一間置いてから。


「貴方『も』主人公なんだよ…」


はっきりと、アントス(モブ)の存在を、肯定してみせた。


 そんな、小さくも、力強い言葉を貰い。

アントスは、心に決めた。


この少女を、この洞窟から、救い出すと…


平凡な自分に、世界を救う力はない。

だとしても、たった一人くらいは、救えるはずだ。


「いくよ。レ二ズとワイズが、待っている」

アントスの言葉に、白髪の少女は、コクリと頷いた。




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