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59話・八本脚の盾


 謎の地震によって、洞窟全体が、ダメージを受けた。

天井の岩が揺れ、徐々に崩落してゆく。


兵士たちにとっても、この事態は、想定外であった。

「崩れるぞ!頭を下げろっ」

慌ただしく、走り周りながら、頭上を警戒する。


揺れ動く視界にて。

アントスは、よろめきながら、天井を見上げた。


瞬間、彼の真上にて、巨大な岩石が落ちてくる。

感覚が赤信号を発し、とっさに身を翻す。


岩は、彼の真横に落ちて、間一髪助かった。


 そして、岩の欠けた天井から。

ゆっくりと、夕焼けの明りが覗いてきた。

オレンジ色の夕焼けが、真っ暗な洞窟を照らしてゆく。


この明りによって、洞窟の暗闇が消え失せる。

それはつまり、「隠れ家」を、失ったということ…


「きさまッ、何をしている!」

さっそく兵士に見つかってしまい、窮地に立たされるアントス。

その怒鳴り声に続き、兵士が次々と、駆けつけてくる。


数十もの銃口が、アントスを一斉に捉えた。


 アントスは、この窮地にて。

『ワイズとの作戦』を、頭の中でイメージした。


そうだ!今こそ、あの作戦をッ。

アントスは意を決し、大きく深呼吸すると。


「ワイズ!走るぞォオオオオ」

一人のアントスの声が、力強く響き渡る。


そして、アントスは、目標の一本道へ向け。

兵士たちに、見向きもせず、全力で走り出す。


アントスの行動に、動揺する兵士たち。

だが、この程度の距離なら、鼠を逃がすことはない。


次々と、銃声が響き渡り。

銃弾の雨が、アントスの背中に襲いかかる。


 だが、アントスが、倒れる事はなかった。

そう、アントスの盾に、なるかの如く。

一体の巨大クモ…ワイズが、立ち塞がったからだ。


この展開こそ、まさしく。

ワイズとアントスの作戦…


キャン、キャン、キャン!

ワイズの甲殻に、弾丸が容易く弾かれる。


「この化物め!」

兵士たちは、罵声を吐きながら、ひたすら銃撃してゆく。


だが、幾ら撃たれようとも、ワイズは怯みはしない。

「さあ、走れ!止まるなッ、ただの男!」

アントス(ただの男)に思いを託し、ひたすら肉壁となる。


 『ワイズが、囮になり。アントスの壁となる』

もし、人間の価値観なら。

この「囮役」を、買って出る者など存在しない。


だが、モンスターのワイズは、この囮役を自ら請け負った。

戦士でも、勇者でもない、ただの一般人アントスを信じて…




 ひたすら続く、一本の道…

「助ける」と心に誓いながら、アントスは一人。


奥へ、奥へと、目指してゆく。



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