表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/176

57話・人間を信じてみた


 ワイズは、大きな岩陰に、身を潜めてから。

背中から、アントスを静かに降ろした。


疲労によって、よろめきながらも。

アントスは、暗闇の天井を見上げる。


「岩だらけじゃないか。コレが収容所?」

天井も、地面も、壁すらも。

すべての一面が、真っ黒な岩石の景色。


「こんな所で、何を?」

 率直なアントスの疑問に。


ワイズが、簡潔に答えてみせえた。

「『毒ガス』を、使うってさ…」


その兵器(毒ガス)の名が、アントスの背筋を凍らせる。

「まさか毒ガスで、あの娘たちを…」


「だろうね」

あっさり肯定され、アントスに緊張が走る。


ヘルス博士は、囚人を確保してから。

新型兵器(毒ガス)の実験台に、するつもりらしい。


毒ガスが、関係していたなら。

兵士たちの防護服や、ガスマスクとも、辻褄が合う。


 ワイズは、岩の陰から、辺りを警戒しながら。

流れるように、とある提案をしてくる。

「レ二ズから、防護マスク…もらったろ?」


どうやら、毒ガスの対策をしろ、と言いたいらしい。


 アントスは、ガスマスクを取り出し、さっそく被ってみた。

柔軟なゴム製の素材が、頭にフィットしてくれる。


このガスマスクは、まるでハエの頭のようだが。

案外、視界も良好で、呼吸もスムーズにできた。

これなら、行動に支障はないだろう。


 アントスは、風のメイスを握りながら。

ワイズと共に、岩陰に隠れ、目標を確認する。

「あの通路か?」


二人のいる岩場から。

40メートルほど先にて「一本道の通路」が伸びていた。


ワイズの推測だと。

この道(一本道)の向こうにて、囚人たちが、連行されたらしい。


 一応、目標は定まった。だが…

目的の通路に着くまで、多くの兵士たちが巡回していた。


きっと、ここから(岩から)飛び出そうモノなら。

一瞬にて、蜂の巣にされてしまう。


「こんなに、ピリピリしてちゃ。怪我じゃ、済まないだろうね」

目玉を動かしながら、ワイズは、分析してゆくと。

「でも」と、言葉を連ねてゆく。


「ここで退いたら、希望はない…」


「どうするんだ?」

そのアントスの疑問に、ワイズは、淡々と作戦を説明する。


 作戦の内容を聞きながら、アントスは、苦々しい表情を浮かべるが。

アントスが言い返すまえに。

ワイズはとっくに、準備を済ませていた。


「人間を…信頼する日が、来るなんて。想像もしてなかった」


巨大クモ(ワイズ)の口調は、穏やかだが。

その心は、この場にいる、誰よりも真剣だった。


だったら、ワイズの本気を、止める権利が、何処にあるのだろうか?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ