51話・文明の力は軽い?
このクモは、かなり大きく…大人三人ほどのサイズがあった。
巨大なクモを前にして、兵士は唾を飲み込む。
「コイツ…奇行種か?」
どうやら、ここまでのサイズのクモは、初見みたいだ。
兵士は、後ろに飛んでから、相手(巨大クモ)から距離を取る。
一体、どんな攻撃が、繰り出されるのか?
まだ、想定できない内は、慎重に立ち回りたいのだろう。
「とった!」
ピッタリと照準を、敵(巨大クモ)の頭部へ…
一切の躊躇なく、引き金を引き。
銃声と共に、一発の銃弾が、繰り出される。
銃弾はまっすぐ、クモに直撃する…が。
カァアッンッ
間抜けな音と共に、いとも簡単に、跳弾してしまった。
クモの頑丈さに、うろたえる兵士。
対する巨大クモの方は。
一ミリも動じずに、じわりじわりと、距離を詰めてくる。
しかも、無数の目玉を、ギョロつかせながら…
そんな、巨大クモの姿に。
兵士だけでなく、囚人たちも畏怖していた。
少年は震えながら、黒頭巾の少女の手を握る。
こんな状況であっても、彼女(黒頭巾の少女)は余裕の表情。
やさしく穏やかに、少年の頭を撫でてあげる。
しかし、この一時…
黒頭巾の少女と巨大クモ…両者の視線が交わった。
そして、彼女(黒頭巾の少女)が、クモに向かって、頷いた。
この行動はまるで、「意思疎通」を、しているみたいだ。
彼女が頷くと同時に、もう一体…
他のモンスターが、奇襲をかけてくる。
灰色の肌に、細い手足、大きな口に、たるんだ耳。
「ゴブリン?!」
アントスの背後、最後尾の兵士が、警戒する。
その兵士は、風のメイスを、腰にぶら下げたまま。
とっさに、銃を構えるが。
灰色のゴブリンは、兵士の鼻の先まで、一瞬で迫りくると。
まるでボールのように、銃口を蹴り上げた。
ライフル銃が、蹴り飛ばされ、円を描きながら宙を舞う。
「軽い、軽い、かったるいねぇ~オモチャの鉄砲はぁ」
灰色のゴブリンが、軽い調子で言い捨て。
手慣れた手つきで、兵士の首に、チョップを繰り出す。
「ぐぅ」
兵士は呻きながら、顔面から地に倒れた。




