50話・巨大クモが、降ってくる?
襲いかかるモンスターたち、鳴り響く銃声。
そんな、殺伐とした状況の中で。
ヘルツ博士が、二人の兵士に、手招きをした。
その二人組の片方は。
黒頭巾の少女から「風のメイス」を、没収した兵士であり。
風のメイスを、ぶら下げながら、博士の元へ駆け寄る。
「博士、安全が優先です。ただちに退却を…」
だが、ヘルツ博士は、眉一つ動かさず。
「命令は?どうしたの?」と、淡々と返した。
囚人たちを、収容所へ連行すること…
それが、博士の命令。
兵士二人は、再び命令を遂行するべく。
アントスたち囚人らを、再び銃で脅し始めた。
「ちょっとでも、止まってみろ。あの『ゴミ』のように、ぶっ殺すからな」
あのゴミ、というのは。
ついさっき撃たれた「物乞いの男」を、指しているのだろう。
「ついてこい」と、尖った声で、兵士が先導してゆく。
きっと行き先は、収容所とやらに、違いないだろう。
老人は全身を震わせ、もはや正気の欠片もない様子。
その老人の一歩後ろには、黒頭巾の少女。
彼女(黒頭巾の少女)は、少年の手を、優しく握ってあげていた。
事の展開が、激しく移り変わり。
アントス自身も、混乱していたが。
彼女(黒頭巾の少女)の悠然とした姿を見ていると、何とか冷静でいられた。
老人、少女、少年、アントスの順に、囚人たちは「収容所」を目指す。
一番先頭にて、博士と、兵士が一人。
そして、最後尾に、風のメイスを持った兵士が尾行する。
刃が飛び交う、戦場の中。
一番先頭の兵士が、空中にて、「何か」がある事に感づく。
それは、大きな影、八本脚のシュルエット。
その影は、凄まじい速度で、博士の頭上へ落下してきた。
「博士!」
危険を察した兵士が、博士を突き飛ばす。
博士の体が、転がってゆき。
ついさっき、彼(ヘルツ博士)が立っていた所に。
ズドォォン!
大きな「八本脚」が、落下してきた。
「巨大…クモ?」
兵士の言う通り、立ちはだかったのは「一体の大きなクモ」。
巨大クモは、無数の眼光で、兵士に標的を定めた。




