4話・ブルーメンの重騎隊
視界に広がる、純白の絨毯。
その上を、重騎兵たちが進行してゆく。
彼ら(重騎兵)は基本、四騎で行動しており。
今、現在…起動しているのは。
ブルーメンの小隊と、もう一つ「16小隊」だけ。
他の兵科の兵士も。
この花壇に、進行していたのだが。
重騎兵の到着以前に。
ここ(白い花壇)で、消息を絶っていた。
消息不明の兵士の探索するのが、今回の任務なわけで。
ブルーメンの小隊…
そして、もう片方の16小隊。
双方の小隊は、互いに散開しながら探索していた。
ブルーメンの小隊は「三騎」しかおらず。
基本の人数より一つ、人手が足りていない。
また、彼を除く、二人は新米だった。
巨大なバスタードソードを背負い。
合鉄の脚で、前進してゆく。
重騎兵の兜は、フルフェイス型。
ゆえに、顔全体が覆われており…
声までは伝わっても、表情までは分からない。
それでも何となく…
隊長は、部下の緊張を察していた。
彼らの緊張を解そうと思い。
気休めの言葉を、探していたとき。
彼の兜にて、指令の通信が響いた。
重騎兵の兜と、コントロール室は…
通信機器によって、リンク(繋がっている)しており。
こうして、司令部と連携を取りながら。
離れた所でも、作戦を展開できるのである。
『13番、応答せよ』
スタッフの通信に、ブルーメンが応答する。
「こちら13重騎兵」
『16の小隊が消えた。ただちに、そちらを探せ』
16番の小隊は、相方の小隊であり。
彼ら(16小隊)が、行方不明となった事…
この展開に、ブルーメンは、妙な胸騒ぎを感じてしまう。
「手がかり一つもない。こちらとしては、退却を提案する」
新米の部下を、危険にさらしたくない。
そんな彼の提案に、スタッフは悩んでいるのか?
しばらく、コントロール室から、返答はなかった…
立ち止まり、黙り込む隊長…
「いかがされました?隊長」
心配した部下が、覗き込んでくる。
もう片方の部下は、オドオドと、周りを警戒していた。
「安心しろ、ただの通信障害だ。ほら、力ぬけよ」
部下を安心させようと、気楽に接するものの。
張り詰めた空気が、解れる事はなく…
司令部(コントロール室)からの返事もない。
ここで一つの仮定を、ブルーメンは思いつく。
コントロール室で、問題が起きたのか?
それはマズイ…
中核(コントロール室)に、障害が起きたら。
「研究所全域」が、崩壊してしまうから…
しかし、幸いにも、数分後…
『わっ悪い。回線が不調でな…』
司令部(コントロール室)から、慌てて返信がきた。
そのスタッフの声は、何故だか息切れしており。
「そちらで、支障でも?」
不信に感じたブルーメンが、慎重に聞いてみた。
『いつも通りだ13番。黙って、任務を続けろ。それと…』
だが、相手(司令部)は、淡々と彼の疑問を流し。
次々と、指示を飛ばしてくる。
『16小隊の座標を特定した…』
『ただちに、移動しろ』
「座標」というワードに、緊張するブルーメン。
「座標だと?どういうことだ!」
だが、それ以上の答え(返信)はなく。
ひたすら、怒鳴っても…相手(司令部)は、黙ったままだった。
ブルーメンが「座標」と、叫んだことで。
後ろの二人(新米)が、震えあがる…
「誰かが、死んだのかな…」
バスタードソードを握りしめ、頑丈な体を震わせる。
そして…不安の視線を、隊長の背むけた。
それは、当然の反応だ。
「座標」というのは、重騎兵の「生命反応」を表し。
重騎兵が「機能を停止」した際、起動する機能だからだ。
すなわち、座標は…
重騎兵の死を、意味しているのだ。
重騎兵が死ぬ?こんな…花壇で?
ありえないと…ブルーメンは内心、否定していた。
重騎兵一体の戦闘力は、100人の騎士に匹敵する。
ゆえにスライム一匹すらいない…
こんな花壇で、危機に陥るなど、ある筈がない。
ブルーメンは、通信の「座標」を確認すると。
「人を勝手に殺すな。単なる故障かもしれん」
「つぎのポイントに移動。陣形は崩すなよ」
次の指示を告げてから。
二人の部下を引き連れて、前進してゆく。
そして…
彼らの行く先には…
小さな木が一本、ちんまりと佇んでいた。