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47話・小さな背中に守られて


 「手荒な真似を、どうぞ許してほしい」

ヘルツ博士は、穏やかな表情を、張り付けたまま。

「ここは、避難所だから。安心してくれ」


その偽りの「安全」に。

老人と物乞いの男が、安心して一息ついた。


 当然、家族(妻)を殺された、アントスにとって。

彼らを信用するなど、無理な話だった。


「妻を撃っておいて、よくも!そんな、ヘラヘラとっ!」

アントスの肩が、怒りで震える。


そんなアントスの怒りを。

ヘルツ博士は、鼻で笑ってみせる。

「君の奥さんは、感染していた。あの時、撃ったから、君はここにいる」


そして、軽くウインクしてから。

「感謝…してほしいよね?」

まるで、友達のように、接してくる。


ヘルツ博士の馬鹿にした態度に。

アントスの中で、プツンと、何かが切れた。


「こんの!クソやろぉおおおおおおおおお!」


怒りを爆発させ、殴りにかかるアントス。

まっすぐ、ヘルツ博士に、突っ込んでゆく。


だが、彼の拳は、博士に届くことは無かった。


近くにいた兵士が、アントスの脇腹を殴ったからだ。

銃で殴られて、アントスの体が、ボールのように転がっていく。


アントスは、脇腹を抱えながら、懸命に起き上がろうとする。


だが、しかし。


「クソ雑魚が!しゃしゃり出んな!」

一切の容赦なく、兵士が追い打ちをかけてくる。

銃を棍棒の如く振り上げ、狙いは雑魚アントスの頭へ。


 その窮地にて…

アントスと兵士の間に。

黒頭巾の少女が、割り込んできた。


アントスを庇い、盾となる少女…

小さな体が、兵士の前に立ち塞がる。


「お姉ちゃん!」

少年は、彼女の危険に、声を上げてしまう。


だが、兵士の銃は、ピタリと止まっていた。


彼女の不思議な感覚。

その「黄金の瞳」に、見つめられて、混乱しているらしい。


アントスも、少女の小さな背を見上げながら。

つい、呆気にとられてしまう。


ただ、何となく。

黒頭巾の少女が、自分を助けてくれている…という事だけ、察すことができた。


ふんわりとした空気に、兵士からも、怒りの感情が解れていく。


 だが、ヘルツ博士だけは、この瞬間。

べつの意味で、興奮しているみたいだ。


ヘルツ博士は、鼻息を荒げながら。

好奇心の赴くままに、少女の方へ近づいてゆく。


ヘルツ博士の視線は、好奇心という狂気に溢れている。


寒気のする視線に、後ずさる少女。

黒頭巾から覗く、黄金の瞳が、わずかな動揺している。


「ねえ、その眼!よく見せてよッ」

ヘルツ博士は、息を荒らしながら、ヌメリと手を伸ばす。


 そして、ギュッと…

彼女の黒頭巾を、掴んだとき…


「グゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


爆弾のような「唸り声」が、森全体を蹴り飛ばした。


その唸り声は、天から降ってきて。

圧倒的スケールで、地を揺らしてゆく。




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