46話・どうして?「ソレ」を持っているの?
まず手始めに、兵士が、老人へ銃口を向けた。
「おい、ジジイ。お前からだ」
ライフルの先で、老いた背中を押し、老人を馬車から降ろさせる。
そして、老人の後に続き。
物乞い、黒頭巾の少女、少年、アントス…と順番づつ、荷車から出てゆく。
捕虜たちは、降ろされると。
兵士の指示によって、横一列に並ばされた。
アントスは、右側の一番端。
一つ横には、少年が立っており。
少年を守るように、黒頭巾の少女が隣にいる。
見渡す限り、兵士の隊列が並び。
そのスケールに、アントスたちは、すっかり緊迫していた。
怯える捕虜たちへ、数人の兵士たちが歩み寄り。
手慣れた様子で、次の行動に移る。
「身体検査だ。怪しいブツは、押収しろ」
命令が下り、兵士たちが、捕虜たちの体を漁りだす。
物乞いの男の懐から、小銭や錆びたナイフなど。
老人からは、薬の袋が出てきた。
いずれにせよ、持ち物の殆どが、小物ばかりだ。
兵士は、持ち物を次々を没収してゆき。
相手が子供だろうと、少年からも「宝物」を奪った。
その大切なモノ(宝物)とは、一輪の小さな花…
健気な宝物を、乱暴に奪われてしまい。
少年は、涙を浮かべてしまう。
そんな彼(少年)の小さい頭を。
黒頭巾の少女が、ヨシヨシと、やさしく撫でてあげる。
兵士たちは構わずに、彼女の懐を、探っていたが…
この少女が、所有していたモノに、動揺を露わにする。
なぜなら、その小柄な体とは、不釣り合いな。
獰猛な「武器」が、現れたからだ。
「コイツぁ!エルフの武器か?」
コレ(エルフの武器)の登場によって、騒めく兵士たち。
だが、一番混乱していたのは…
端っこにいた、アントスだった。
『風のメイスッ!』
そう、この少女が持っていた「エルフの武器」とは。
紛れもなく、「リピス」の愛武器だったのだ…
どうして?
彼女(黒頭巾の少女)が、リピスの武器を?
風のメイスは没収され。
兵士たちの騒ぎは、あっさりと静まった。
兵士は風のメイスを没収すると。
何気なく、このメイスを、腰に掛けてみた。
どうやら、ずっと心配しているのは、アントスだけらしい。
捕虜たちは、身包みを剥がされ、完全に手ぶらとなった。
そんな彼らの元へ…
白衣を纏った男が、微笑みながら近づいてきた。
彼こそは、ヘルツ博士。
博士の顔を見た途端、黒頭巾の少女は、僅かに後ずさりした。
でも、そんな反応など…誰も、感づいていない。