41話・巨大クモと灰色のゴブリン
木の葉が覆い茂る、一本の上にて。
とあるモンスターが、下の様子を監視していた。
そのモンスターは、「巨大クモ」の一種であり。
体格は有に、男性の大人、三人分はあるだろう。
巨大クモは、枝に摑まりながら。
木の葉の奥から、ギョロ目を光らせる。
視線の下には「深淵洞窟」があって。
約四か所、洞穴が設けられている。
洞穴の周辺では、兵士たちが巡回しており。
巨大クモは、兵士の数を数えながら、不安を感じていた。
『兵(人間)が多いな、百人…いや、もっと』
情報が増える度、彼(巨大クモ)の不安が膨れてゆく。
すると、クモの隠れている木に。
もう一体、別のモンスターが、飛び乗ってきた。
灰色の肌に、細い手足、大きな口に、たるんだ耳。
そう、このモンスターこそ、俗に言う「ゴブリン」だ。
ゴブリンは、クモの頭を突いて、ヒソヒソ声で報告する。
「ごきげんよう、ワイズくん。続報だぜ」
『ワイズ』と、自分の名を呼ばれても…
巨大クモ(ワイズ)は、洞穴から視線を外しはしない。
ワイズ(巨大クモ)はひたすら、四つの洞穴に集中し続ける。
「なんだよ?レ二ズ。今度の情報は、役に立つのかい?」
ゴブリンの名は「レ二ズ」。
相方と対照的に、お気楽な様子だ。
レ二ズ(ゴブリン)は、大きな口を「へ」に曲げてから。
「生真面目、スパイダーメンかな?」
愉快にお茶らけても、ワイズは真剣なままだ。
ワイズはじっと、意識を集中させながら。
懐にいる、芋虫サイズの子グモと、視線を交わす。
今の彼には、どこか…焦りがあるようにも見える。
「落ちつけよ。目的は『偵察』だぜ?」
そう軽く言いながら、レ二ズは続けて…「特定したぜ」と。
真剣な声で、ワイズに報告する。
その情報に驚いて、ワイズは、ガサガサと体を揺さぶる。
「本当か?!、どこだ!」
「おいおい、気づかれるだろ」
そう軽く注意されて…
すまない、とワイズは、調子を取り戻した。