40話・会議とは、隠れてするモノ
ここは、洞窟の奥…
ゴツゴツな岩に、壁が覆われている。
壁には、ランタンが飾られており。
オレンジ色の灯りが、薄暗い洞窟を照らしてゆく。
この洞窟の名は「深淵洞窟」。
モンスターの領域である「開花の森」に含まれるエリアの一つ。
深淵洞窟の深部には、会議室が設けられ。
そこには、二人の男がいた。
白衣の男と、軍服の老人…
彼らは、円卓のテーブルを囲みながら。
散らばった資料に目を通す。
資料の殆どが「Pウイルス」の内容であり。
感染者の記録が、山積みとなっていた。
白衣の男が、資料を片手に、淡々と解説する。
「Pウイルスはね…生命そのものを、支配するのさ」
言葉を遮って、軍服の老人が問いただす。
「感染するのは、人間だけなのか?」
「いいや」と、白衣の男は、不吉に笑った。
「人間、エルフ、モンスター、ドラゴン…ひょっとしたら、神様だって感染するかも」
ふざけた言葉を、ツラツラと垂れるが。
相手の方(軍服の老人)は、とても緊迫している様子。
白衣の男は、声を躍らせ、老人の横顔を覗く。
「どうだい?Pウイルスは、お気に召したかな?」
「見事だ…ヘルツ博士」
その相応しい評価をに、白衣の男…
ヘルツ博士は、誇らしげに胸を張った。
そして、流れるように、新な資料を広げる。
その資料の内容に、相手(軍服の老人)の顔色が変わる。
「コレ…は?!毒ガスなのか!」
ヘルツ博士は、軽くウインクして頷いた。
「そっ、新型のPウイルスさ」
「だが」と、軍服の老人は、反論を捻りだす。
「我々が欲すのは、『シュタハス』の力だ。兵器ではない…」
博士は、待ってました、と言わんばかりに。
「この新作(毒ガス)で、降臨させるのさ。偉大なるシュタハスを…ね?」
台本のような台詞で、長々と喋る。
軍服の老人は、明らかに、不満があるようで。
何か言い返そうと、老人が口を開こうとした…そのとき。
一人の兵士が、割り込んできた。
ガスマスク…そして、白い防護服。
兵士は一礼してから。
「司令官、報告です」
軍服の老人へ、報告を伝えにくる。
老人は、邪魔が入って、苛立ちながらも。
「言え」
兵士の報告に、耳を傾けることにした。
「はっ、マシュルクの生存者を、確保しました」
その報告に、ヘルツ博士は、声を躍らせた。
「サンプル、かくほぉ~」
軍服の老人が、細かな情報を問う。
「到着時間は?」
「はっ、夕暮れ時には、馬車が戻ってきます」
この他にも、色々な情報が、入ってきたが。
ヘルツ博士の意識は、別の所に移っていた。
彼の手には、一冊の絵本があり…
絵本のタイトルは『スピナル童話』。
「さあ、シュタハスよ」
絵本をめくりながら、ヘルツ博士は、ニタリと笑う。
「ただいま、帰ります」




