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28話・破綻!ディアトロ騎士団

リピスは、ロイド(感染者)を相手するのに手一杯。

 ゆえに、少女メイドの殺意には、気づいていない。


このままだと、リピスの身も危ない。


彼女を救うべく、アントスは、勢いよく飛び出した。


「大きな荷物」を、放り投げて、全力で駆け抜ける。

あんなにも、この荷物に拘っていたのに。

今となっては…自分の責務など、どうでも良かった。



 そして、メイド(感染者)が、リピスの懐に潜り込んだとき…


「あっ…」

リピスはようやく、自分が置かれている状況を察した。


「死」を悟った途端。

メイスを握る手から、フワリと、力が抜けてしまう。


少女の奇襲は、とてつもなく俊敏で。


弾丸のような「突き」を、リピスの喉めがけて放った。

鋭く尖った爪が、彼女リピスの白い首へ、達する寸前…


「うおぉぉぉ!」

アントスが全力で、メイドを突き飛ばした。


「ギャアッ!」

真横からのタックル(妨害)により、床を転がってゆくメイド(感染者)。


メイドは、すぐさま体勢を整えると

緑の液体を垂らしながら、次はアントスへ、標的を代える。


そんな彼女の殺意が、伝染してゆき。

後ろから、ゾロゾロと、感染者たちが集まってきた。


リピスを庇いながら、アントスは突破口を模索する。

なにか、打開策は?必死に、思考を巡らせていたとき。


 アントスの後ろで、リピスが肩を震わせた。

「ディアトロ?嘘…でしょ」

恐怖に震える、リピスの声…


そう、この瞬間…彼女の目に、飛び込んできたのは。

野犬の如く、「人の死骸」を貪る、団長ディアトロだったからだ。


人肉に群れる、ディアトロには。

もう、団長としての風格も、人としての面影も、欠片も残っていない。


さっきまで、談笑していた、仲間たちの肉を…

ディアトロは目から、緑の液体を流しながら。

顎が裂ける勢いで、ひたすら貪ってゆく。


 もはや完全に、「ディアトロ騎士団」は、潰れてしまった。


もうどこにも、名誉も誇りもなく。

感染者たちの呻き声が、冷たい「死」を充満させていた。


ただ、生き残るため。

リピスとアントスは、懸命に抵抗を試みるが。


だが、二人の顔つきは、明らかに動揺していた。


わけもわからず、ギルドが崩壊したのだ。

恐怖し混乱するのも、当然だろう。


だが、こうしている内にも。

人の皮を被った感染者たちが、殺意を燃やしながら。

刻一刻と、距離を詰めてくる。


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