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27話・風のメイスと道しるべ

 安い給料で買った、小さなテーブル。

でも、家族みんな、このテーブルを気に入っていた。


「パパは勇者なんでしょ?!やっぱり凄いや!」

まだ、8歳の息子は、目を輝かせながら喜んだ。


「こらこら、パパを困らせちゃ、メッ」

妻が、息子の頭を撫でながら、温かく微笑む。


息子の大きな期待に、アントスはいつも困っていたが。

こんな「普通の日常」を、何よりも愛していた。


「ただいま。今、帰ったよ」

アントスは、家族の元へ帰ろうと。

暖かな空気へ、身を委ねた。


だが、妻と息子は、彼に手を振ると…

優しく笑いながら、霧のむこうへ消えていった。


妻と息子は、霧の奥へと消えてゆき。

アントスは必死に、二人の後を追いかけようとする。


だが、しかし…

つぎの瞬間、目の前を覆っていた霧が、パァッと張れた。



「どけよっ、ボンクラ!」

激しく怒鳴られ、アントスの頬に激痛が走った。

どうやら、戦士に殴られたらしい。


 その痛みで、アントスは目を覚ますと、やっと我に返った。

痛む頬を抑えながら、できる限りの情報整理をする。


殴ってきた戦士はもう、どこかに走り去っていた。

現状、そんな事など、どうでも良かった。


今、リピスの安否を、優先するべきだろう。

「リピスさんは?」


懸命に目を凝らし、人混みの隙間から、リピスを見つけようとするが。

金髪のエルフが多すぎて、とても見分けがつかない。


しかも、こんな荒れた状態なのだ。

まともな識別など、できるはずも無かった。

『どこにいるんだ?!』


アントスは完全に、孤立しており。

ディアトロ達から、逸れてしまっていた。


 だが、こんな絶望的な状況にて…

身に覚えのある「風」が、アントスの横を通り過ぎていった。


風の音が、轟々と鳴り響く。

この風音を、アントスは肌身で覚えている。


「風のメイスだ!」

風のメイスの合図(風音)を頼りに、人混みの中を慎重に進む。


風音の大きさからして、そこまで距離は離れていない。

だが、背中の荷物が大きすぎる上に…

荒れた人混みが、行く手を遮り、そう安々とは進めない。


そして、やっとかっと苦戦しながらも。

ようやく、風のメイスを構えた、女性のエルフを発見する。


感染者と化したロイドに、果敢に挑むリピス…

『リピスさんっ』

心の中で叫びながら、アントスは、彼女の加勢に入ろうとするが。


このとき…

アントスは遠目から、ハッキリと見た。


 「メイドの少女」が、ノロリと起き上がったのを。


その少女の口からは、緑の液体が滴っており…

血に飢えた眼光で、傍らからリピスを睨んでいる。


そして…

死角から、ハイエナの如く、リピスへ奇襲をかけた。


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