24・仲間割れ?それとも…
「おい!白魔術師!どうしたんだよ?!」
ロイドは叫びながら、ノエフの暴走を抑えようとする。
だが…
相手の腕力は、怪物の如く凄まじい。
その人間離れした力に、追い込まれて。
ロイドの首が、ノエフに噛みつかれてしまった。
首に激痛が走り、彼は思わず、表情を歪めてしまう。
「ぐぅ!」
グチャリと、生々しい音がして。
ロイドは、首に手をやって、傷を確かめてみた。
すると、首の左側が、カッポリと無くなっていて。
乾いた空気が、ヒューと、通り過ぎてゆく。
ノエフの口元は、ロイドの血で、真っ赤に染まっている。
ロイドの首から、ボタボタと、血が滝のように零れてゆく。
大量の出血で、ロイドは失神し、崩れながら倒れた。
メイドの顔に、真っ赤な血がこびりつき、恐怖の悲鳴をあげた。
「いっや、嫌…イヤァぁぁ!!」
その少女の悲鳴に、周囲の視線が集まる。
団長のディアトロは、驚きながら席を立つと。
血に染まった床をみて、途端に血相を変えた。
倒れているロイド、血だらけのノエフ。
ノエフのこんな姿…団長の彼ですら、見たことがない。
ディアトロは、手惑いながらも、ノエフを落ち着かせようと。
ゆっくり慎重に、手を前に出してみる。
だが、ノエフは…
「ギャアぁ!」と、緑の液体を吐きだしながら。
獣の如く、ディアトロの手に、噛みついてきた。
ディアトロは、反射的に手を引くが、もう既に遅く。
右手の殆どが、もっていかれ、血が溢れだしてくる。
無残に負傷した手を見て、ディアトロは確信した。
目の前の男は、自分が知っている、白魔術師ではないと。
ノエフ(白魔術師)の姿をした怪物であると。
「くそったれ!」
ディアトロは、残った左手で、剣を抜こうとするが。
大量の出血により、意識がハッキリしてくれない。
一方、リピスとアントスは…
メイドの少女の悲鳴で、この惨事に気づく。
リピスは遠目から、ノエフの様子を見て、首を傾げていた。
「ノエ…フ?」
どうやら、彼の豹変には、リピスでさえも、戸惑っているようだ。
手を負傷し、窮地に追い込まれるディアトロ。
そしてまた、襲いかかるノエフ。
リピスは、この騒動を抑えるため、迷わず駆け出してゆく。
だが、団長を助けるには、あと数秒だけ足りない。