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23話・白魔術師の狂気

弓兵のロイドは、ターキー肉に噛ぶりつくと、満足気に鼻をならした。


 一方、白魔術師のノエフは、グッタリしたままだ。


どうやら、ノエフを、気にかける者は、一人もいないようだ。

それも当然だろう。

皆が騒ぐ集団の中で、一人の不調など、誰が気にするのだろうか。


メイドが、次々と料理を持ってきて。

机に並ぶフルコースを、ロイドはペロッと平らげてゆく。


団長のディアトロは、ドラゴンの話題に夢中で、料理に手をつけていない。


料理を食べているのは、ロイドだけだが。

食事のペースが意外と早く、メイドは切羽詰まっていた。


メイドの少女は、せっせと往復しながら、ほんの少しだけ。

 グッタリとしている、ノエフの顔色を覗いた。


「あの…お客さま?」

少女は慎重に、お客さま(ノエフ)に声をかけてみるが。

ウンともスンとも、返事はこない。


しかし、この時、少女の目にハッキリと映った。

ノエフの口から、ダラダラと垂れる、緑色の液体が…


不気味に感じた少女は、ノエフから視線を逸らすと。

誤魔化すように一礼してから、ノエフに背中を向けた。


 その時だった…


「ウァアアアアアアアア!」

少女の背後で、狂気の叫び声が轟いた。


狂った獣のような叫びに、少女の背中が、恐怖で凍りつく。

その叫びは、白魔術師のノエフのモノで。

ノエフは、緑の液体を垂らしながら、メイドを睨んでいる。


ここでようやく、隣で座っていたロイドが、事の異変を察した。

「あ?」

ロイドが面倒苦さそうに、ノエフへ視線をやったとき…


 ノエフが殺意むき出しで、少女の背中に飛びかかった。


「きゃ…!」

背中から押し倒され、短く叫ぶメイドの少女。


無抵抗の小さな背中を抑えつけ、ノエフは細い首筋を睨みつけた。

そして、顎が割れる勢いで、大きく激しく、口を開いた。


口の中では、緑色に染まった歯が並び、もはや怪物にしか見えない。


「おっ…おい、どうした!白魔術師?!」

ロイドが心配して、ノエフの肩に手をやる。


その瞬間、鎖から放たように。

「ウォオオオオ!」

ノエフが叫びながら、メイドの首に噛みつこうとする。


そして、狂気の牙が、細い首へ達する寸前。

「やめろよ!」

ロイドが、ノエフの懐にタックルをした。


 その衝撃で、メイドの少女の袖が、ビリっと破けた。

破けた所には、爪痕が、くっきりと浮かび上がっていた。

どうやら、ノエフに襲われたとき、できた爪痕らしい。


この時点で、ノエフの殺意は完全に、ロイドに移っていた。


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