18話・始まりのバケツ亭
辺り一面、剣士や魔術師、エルフなどの豪華な面子で溢れ。
尚更、アントスの貧乏くさい姿が目立ってしまう。
勇者や戦士で溢れる、この偉大なる区域にて。
庶民がいる事を、心地よく感じる者などいない。
しかも、アントスは、ずんぐりと固まった荷物を背負っている。
ゆえに、その滑稽な姿を、道行く勇者たちが嘲笑う。
まあ、こうして馬鹿にされるのも、慣れっこなので。
そこまで、アントスは気にしてなかった。
ディアトロは、ようやく止まると、とある集会所に目星をつけた。
「よし、ここにするか」
看板には「始まりのバケツ亭」と、集会所の名が記されていた。
「おいおい、ネーミングセンスが、微妙だな。こりゃ」
弓兵のロイドが、文句を垂れる。
「そうかしら?可愛いと、思うけど」
ロイドと対象的に、リピスは集会所を褒める。
「名前など、知るかよ。ほら、モタモタすんな」
そう言ってディアトロは、木製の扉を開くと、集会所に入店した。
リーダである彼の後に、他のメンバー(四人)も、後に続いてゆく。
この集会所の中も、外と同様、戦士や勇者の人混みで賑わっている。
木製の壁には、モンスターの頭蓋骨が、飾られており。
ゴブリンやオークなど、様々なバリエーションの骨格が置かれていた。
円形のテーブルが、部屋の向こうまで、ズラリと並び。
肉料理やお酒など、色鮮やかな食事たちが列を成す。
最高のビールに、極上の料理、見渡す限り、強情の光景が広がっている。
皆が楽しさの余りに興奮し、踊ったり、暴れたりする者までいた。
入ってすぐの正面にて、少女のメイドが立ったまま。
ディアトロ一行を、笑顔で迎え入れてくれた。
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」
メイドの少女は、長いエルフ耳を揺らしながら。
団長のディアトロに、微笑みかける。
黄色のエプロンに、白のドレス。
この集会所のメイド服も、店内の雰囲気と同じく、とても明るい。
この集会所では、エルフのメイドで、統一しているらしく。
忙しそうに行き交う、少女らには、尖ったエルフ耳があった。
すっかり上機嫌なディアトロは、嬉しそうに頷くと。
「4人だ。ギルド名は、ディアトロ騎士団」
「はーい。ディアトロ様ご一行。ご案内でーす」
少女のメイドは、スタスタと歩きながら、お客様に案内をする。
バカ騒ぎする者や、酔っ払って踊る者など、人混みは慌ただしく。
テーブルに着くまで、ほんの少しばかり、長い道のりになりそうだ。