172話・新たなる皇帝
それから、4年の月日が流れた…
世界を震えさせた「Pウイルス」は、面影の欠片すらなく。
かつてのパンデミック事件は、もはや語り草となっていた。
また、エルフの都…マシュルクでは、事件による痛手が多大で。
2代目皇帝「ブラッド王」の死もあってか…
指導者なしで、街を復旧させるのは、膨大な苦労と労力が掛かった。
ゆえに、事件終結後…3年の期間。
エルフの都は、環境的にも、経済的にも、厳しい状態に置かれていた。
ウイルスが消えた事で、正気を取り戻した「感染者」もいたが…
「感染者」の大多数が、Pウイルスによる「後遺症」と「副作用」によって死亡した。
それに「正気」に戻ったとしても。
頭を破壊されるなど…致命傷を受けていた場合。
たとえ、Pウイルスが体から消えても、死ぬ事には変わりない。
つまり、結局のところ…脅威が消え去ろうと。
「死者の人口」は、生存者の「4~5倍」に達しているわけだ。
街の頭脳(ブラッド皇帝)も、街の手数(市民)すらも失ってしまい。
「次期皇帝」の選挙など。
マシュルク復興の為の計画が、幾度も行われてきた。
だが、パンデミック事件の影響により、皆が疲労しており。
一人一人が、毎日を生きるのでやっと…皇帝どころではない。
そんな彼らの元へ…天からのサポートか?
たった一人だけ、自ら「皇帝役」を、請け負う者が現れた。
その者は、いとも容易く、エルフの騎士たちを操り。
数々のアイディアと知略で、衰退したマシュルクを復旧させてゆく。
その能力を称え、民は口を揃えて「3代目皇帝」と呼んだ。
3代目皇帝が誕生し、それからの事は、あっという間…
日を重ねる度、建物が増えてゆき。
高度なエルフの技術が、存分に振るわれた。
そしてまた「貿易国」としての立場を取り戻し。
かつての全盛期のよう…
緑の草原「ドレッド平原」を、沢山の馬車が行き来してゆく。
また、この新皇帝は「開花の森」について、異様に詳しかった…
皇帝が言う…「今の開花の森に、危険はない」と。
その情報は、まさしくその通り。
凶悪なるモンスターたちは、森の中から姿を消しており。
数年前まで「モンスター領域」として、恐れられていた森は…
重要な「人類の資源」となっていた。
そう、マシュルクの復興は、開花の森の恩恵も受けているのだ。
順調な波に乗って、剣士や魔術師…
そして、戦士や勇者たちが…他国から、ゾロゾロとやって来た。
何百、何千、何万人と、戦士たちの人口が増え。
街の建物が「宿屋」「酒場」「戦士ギルド」など…
勇敢なる者たち(戦士)の環境に、染められてゆく。
もはや、貿易どころか「勇者の都」としても…マシュルクは有名になり。
街中が活気で溢れ、ほぼ毎日…イベントやお祭りが開催された。