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167話・ただの男と白髪の少女


 状況は、更に悪化…

触手の数が、倍以上に膨れ上がり。

フロラシオンの殺意(触手)が、そこら中にあった。


 だが、だとしても…

シュタハスに、一寸の迷いもなく。

白い裸足で、果敢に駆け出していった。


その小さな背中に、アントスも続いてゆく…


 触手たちは、曲線を描きながら、襲いかかってくる。

標的は一点…彼女シュタハスの頭部へ。


 アントスは、彼女の背についてゆきながら。

風の力で、迫りくる脅威を、振り払い続けた。


 風のメイスが振るわれる度…荒々しい暴風が、触手たちを払ってみせるが。

相手フロラシオンに接近するほど、触手の反撃が桁を増す。


 もはや、触手の数は、数え切れる範囲を超え…

一本、一本が、音速で飛んできた。

風の壁によって…

彼女シュタハスを、寸前の所で守れてはいる。


 だが、全てを防ぐのは不可能であり。

何本かの触手が、風の壁を貫通してきた。

獰猛な触手は、風を通り抜け…二人に襲いかかる。


シュタハスの頬から、血が流れ。


アントスの肩に、激痛が走る。


それでも決して、止まりはしない。

ひたすら、一歩を…全力で進み続けた。


 そして、フロラシオンまで、わずか数メートルのとき。


アントスの左脚が、触手に捉えられてしまった。

脚を掴まれてしまい…ボールのように、宙へ投げられてしまう。


 体が放られて、花壇の上を転がるアントス…

アントスが倒れた事により、風の壁が消滅してゆき。


 アントスが倒れた事を心配し…

白髪の少女シュタハスは、その脚を止めてしまった。


そして…彼の方へと、駆け寄ろうとする…が。


「止まるな!いけェ!!!」


アントスは鬼神の如く、腹の底から声をだした。


 その凄まじい気迫が、シュタハスの体を突き動かす。


黄金の瞳は、もう二度と、振り返ることはせず。

強大なる相手に、照準を定めていた。


 アントスは倒れながら、風のメイスを振り続けた。

何度も、何度も…

肩が痺れて感覚が無くなっても、決して妥協することなく。

触手たちの脅威に、たった一人で対抗する。


 凄まじい豪風が、触手たちを粉々に粉砕し…

もはや完全に、触手たちの矛先は、このアントスに集中していた。


 ゆえに、白髪の少女までは、気づいていないらしい。

 


 小さい彼女シュタハスならば…

フロラシオンの内部は、十分に広く感じられて。

蔦の裂け目を通るのは造作もなかった。


 上も横も、頑丈な蔦だらけ。

そして、正面に連なる、一本の空間。

邪魔するモノは無い…ただ、真直ぐに進むだけだ。


外の世界…フロラシオンの外から、激しく風の音が鳴る。


「あああああああああああ」


 ここからでも、アントスの奮闘する声が、十分に聞こえてきた。

声の様子からして、彼の限界は近い。

ゆえに、潰れるのも、時間の問題だろう。


 一刻も争う、時との戦い。

慎重な足取りで、蔦の道を通り抜け…


 再生の主「シュタハス」は…ついに


赤髪の少女…「マゼンタ」の前に立った…






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