表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
162/176

160話・ちっこい囮役


 「核」はすなわち…

フロラシオンの心臓と呼べるだろう。

それは、相手フロラシオンの体内にあるらしい。


 しかも、ソレ(核)は、触手や蔦に守られており。

全ての触手が、狂気と殺意に満ちている。


 とくに「触手」は、かなりの脅威のようで。

その威力を証明するべく…

シュタハス自ら「攻撃された」脇腹を見せてきた。


「ごらんの通り…『服』がボロボロ」


しかし、裂かれた服とは対象的に…白い肌には傷一つない。


「でもね…」


「私は『治る』だけが、取り柄だから」


 アントスにも何となく…

シュタハスの頑丈さは、理解できていた。

深淵洞窟にて…感染した子供に、襲われたときも…

顔色一つ変えず、毒ガスの中にいたのだから。


 とは言え、服の有様を見れば…

フロラシオンの脅威が、ヒシヒシと伝わってくるわけで。

たとえ「治る」としても。

もうこれ以上、彼女シュタハスを、危険な目に合わせたくない。


だが、そう考えるアントスとは逆に…


「私が、囮になるわ…」


事もあろうか、彼女自ら、囮役を買って出た。


「だから貴方が、核の面倒をみてあげて?」


 シュタハス一人が、注意を引くための餌となり。

その隙に、アントスが、注射で核を破壊する…

一方的な役割分担に、彼は反論せざる負えない。


 いくら傷が治るとしても…

彼女一人に、危険な役割を押し付けるなんて。


「僕に、囮をさせてくれ」


「女の子に、危険は負わせない…」


すると…

彼の言葉(甘さ)に、シュタハスは、クスっと笑った。


「『女の子』って言うほど、若くないよ?」


それに…と黄金の瞳を、静かに細め。


「ときに勇気は、足手まといだから」


いつもの、のんびりとした口調で、凡人アントスの勇気を受け流す。




 結局、シュタハスが「囮」に決まり。


「戦ってる感が、ほしいね…」


そう言って彼女は、アントスの腰にある「風のメイス」を指さした。


「ソレ、貸してくれない?」


 正直、アントスとしては…

彼女が過去に、深淵洞窟にて「風のメイス」を、持っていたのも気になる。

だが、これ以上。

この件を詮索する事に、大した意味はないだろう。


 だから、意識を換えて、素直にメイスを渡した。

丸腰より武器がある方が、幾分マシだから…


シュタハスは、風のメイスを抱えると。

まるで、ハンカチを貸すように「注射器」を手渡してくる。


 アントスの手に、プラスチックの感触が伝わり。

握りしめる右手から、ピリピリとした緊張感が伝わってきた。


緊張するのも無理はない…この一本(注射器)で、あの怪物と戦うのだから。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ