158話・正直な使命
ヘルツ博士の人格を、破綻させたのは…「シュタハス」という存在。
ゆえに、悲劇の発端…それは、彼女にあるのかもしれない。
なぜ「風のメイス」を持っていたのかも…口にしないし。
正直、この白髪の少女は、隠し事が多い。
だとしても、きっと。
これまで自分に、手を貸してくれた者たち…リピス、レ二ズ、ワイズ、フラム。
そして、何よりも大切だった「妻と息子」。
全てを背負って進む事が、何よりも大切なのだから。
もう、これ以上、彼女を詮索するのに意味はない。
「シュタハス…僕に、何ができる?」
キッとした目つきで、黄金の瞳を見て問う。
もう今の彼は、一人の少女に付き添う「戦士」そのものだ。
『ただの一般人が、この世界を救う…』
その予言を、まっすぐに信じて…
かつての仲間たち(モンスター)が…力を貸してくれた。
だから、その思いを引き継いで「戦う義務」がある。
彼女の剣には、ないけれど。
せめて、盾ぐらいには、なれるはず。
強固な意志によって、アントスの眼差しが燃え上がり。
この反応が、予想外だったのか?
彼の熱意を前に、シュタハスは驚いていた。
困ったように、首を傾げると。
その黄金の瞳を、落ち着きなくキョロキョロさせる。
「えっ?!えっとぉ~」
どうやら、アントスの熱意に、ペースを乱されているみたいだ。
そんな主の動揺っぷりを見て。
「あはは~へんなのォ」
楽しそうに笑う、黒髪の少女。
「シュタさま、モゴモゴしてる~」
その純粋な笑顔に、彼女もまた…
「ウフフ…」と穏やかに微笑み、いつもの調子を取り戻した。
そして…
いつものように、のんびりと一息つく。
「ふぅ…」
黄金の瞳を細め、アントスの方へ歩み寄る。
「貴方なら、世界を、救えるのかしら?」
それは、心を覗いているような…問いかけ。
きっと、この問いの前には、虚勢も虚言も意味はない。
「わからない。でも…」
「自分の『精一杯』を…全うするだけだ」
だから正直に、心の内を打ち明けた。
シュタハスは、その「正直」を否定せず。
平穏とした口調で、彼の意志を受け止めた。
「そぉっかぁ」