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15話・破壊と烈火のドラゴン

 このドラゴンは、およそ20年前…

世界を混沌に陥れた、「破壊の主」の一つ。


舞い降りたドラゴンは二体。

破壊と烈火の龍、そして、神託と氷結の龍。


これらの脅威に、戦士や勇者、数多くの者共が、力を集結させて。

莫大な犠牲を出しながらも、間一髪…ドラゴンの脅威を凌いだ。


 なのに、今現在、このドレッド平原にいるのは、烈火とドラゴンそのもの。

 

巨大な翼の影が、平原を黒く染めてゆく。

ドラゴンの足が地を踏みしめ、芝生の一本一本までもが、畏怖している。

赤い鱗に包まれた体は、まさしく真紅の要塞であり。


灼熱の風によって、空気が沸騰してゆく。

 


 騎士団の四人は、大地にしがみつきながら、何とか武器を構えるが。


対するドラゴンの方は、じぃーっと、彼ら見下ろすだけ。

体から殺意を燃やすが、何をしてくる様子もない。


両者(ドラゴンと騎士団)の間に、異様な沈黙が流れる。

 

その沈黙に、痺れを切らしたのか?

弓兵のロイドが、ドラゴンの頭に照準を合わせた。


「まって!撃っちゃダメ!」

リピスが怒鳴り、ロイドの攻撃を止めさせる。


「なんでだよ!?いま、やらなきゃ」

「いいから」リピスは、ロイドを止めながら、ドラゴンを観察している。

 

実のところ、ドラゴンの視線に、騎士団は含まれておらず。

奇襲のチャンスは、今しかない…だが。

この時、彼女は無意識に『手を出してはならない』と感じていた。




 雑用のアントスは、馬車の後ろから、地獄を見守ることしか出来なかった。

ここ(馬車の後ろ)からでも、沸騰した空気が、肌に触れてくる。


ドラゴンの巨大は壮観で、馬車の裏からでも、大きなトカゲ頭がみえる。

 

積み荷を、襲いに来たのか?そんなバカな。

アントスは、首を振りながら考えた。


伝説の存在が、積み荷を襲うなど、低俗なことをする筈がない。

なのに、その筈なのに…


ただ一直線に、破壊と烈火のドラゴンは、アントスを見据えていた。


業火の様な赤い眼に睨まれ、アントスの唾が乾く。


だが、この瞬間、彼だけが、ある事に気づいた。


ドラゴンの首元の鱗が、破損して、失われていることに…

目を凝らして見ると、頭部にも深い傷があった。

 


 ドラゴンとアントスの視線が交わり、ドラゴンが大きく顔をあげる。

 

そして… 

口を大きく開いて。

力の限り。


グオオオオオオオオオオオオォ!


圧倒的な叫びで、晴天の空を揺らしてゆく」。

 

爆弾が炸裂したような衝撃に、平原全体が跳ね上がる。



一瞬、アントスの意識が飛び、惨めに尻もちをつく。


桁違いの威圧感に、騎士団の四人も、ガクガクと震えるだけ。

もはや、こちらの戦意は完全に削がれ、ドラゴンの優勢は言うまでもない。

 

 だが、これ以上、ドラゴンは、何をする訳でもなく。

ゆっくりと翼を、羽ばたかせる。


そして、晴天の空を、大きな翼で覆いつくしながら。

青く広がる天の彼方へと、飛び立ってゆく。


その「破壊の化身」の姿を。

彼らはただ、唖然と、見送ることしか出来なかった。


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