156話・水の巨人とフロラシオン
指揮官ヒュドールは、第一章の「1話~3話」にて登場します。
だが、先鋭の部隊(重騎兵)を出撃させようとも。
結局のところ、ミイラ取りがミイラとなった。
彼ら(重騎兵)もまた、花壇に行ったきり失踪してしまい。
そして…
行方不明となった者たちは、pウイルスによって。
ゾンビの類より柄の悪い「感染者」と化してしまう。
「感染者」たちの拡散力は凄まじく。
生存者たちが、状況を整理する暇もなく…瞬く間に、研究所は陥落した。
襲われた者(生存者)は、一間の猶予すらなく感染。
あんなにも、手間暇かけて建設された「研究所」が…
たった数時間で「感染者」の溜り場と化してしまった。
Pウイルスによって、研究所が陥落して…数時間後。
研究所の片隅にある、一般兵の兵舎にて。
一人の男が、眠りから覚めた。
その男の名は「リオス」…力を持たぬただの兵士。
眠りから覚めたリオスは、外の危険を察すると。
13番目の重騎兵「ブルーメン」という友を救うため…
自ら、危険な外にへと飛び出していった。
彼は、友の行き先を「あの花壇」だと予測して。
追いかけてくる「感染者」の山から、死に物狂いで走り続けた。
このとき、リオスは「見捨てたり」もした…
だが、ソレは生き残る為に…「自分の事を待っている人」の為にした事。
そう彼はいつも「手紙」を書いており。
エルフの都マシュルクにいる…婚約者「リピス」に宛てた手紙だった。
あの手紙は、届いただろうか?
彼女が、危険を冒していないだろうか?
逃げながら考えるのは、大切な人の事ばかりだった。
ようやく、ドーム状の建物に侵入…白い花壇へと踏み込む。
そんな彼の到着を「真紅の華」が、揺れながら待っていた。
そして…
真紅の華は、この時を狙っていたかのように。
その小さな体から、無数の触手を伸ばした。
反応する暇さえ与えず、リオスの体を取り込んでゆき。
触手に取り込まれた、リオスの体は…
顔も手足も、胴体も皮膚も…まるで「血管」のような蔦に、変形していった。
リオスを起点として、無数の蔦が絡み合い。
赤い蔦によって、ドームの建物が、埋め尽くされてしまう。
ヘルツ博士は…
その有様を傍観しながら、その名を呼んだ。
「フロラシオン」と。
また一人…無謀な男が、この花壇を訪れる。
男の名は「ヒュドール」正義感の強い、軍の指揮官。
指揮者としての責任を果たすべく。
ヒュドールは一人、フロラシオンに立ち向かった。
だが、当然のことながら…
全く歯が立たずに、蔦の猛攻を前に倒れた。
ヒュドールもまた…フロラシオンに「変貌」させられてしまい。
熱い正義の心から、人間性を奪われ、異形の怪物として生まれ変わった。
膨張する風船の如く、どんどん体が膨れ上がり。
皮膚が水晶玉のように、透明化してゆく。
そして…巨大化した彼の頭が、いとも簡単に、夜空の空についた。
このとき、地を震わせる「水の巨人」が歩いた。
真紅の華は、指揮官の「ヒュドール」と一般兵の「リオス」を選定し…
ヒュドールを「水の巨人」に。
リオスを「フロラシオン」に。
世界崩落の序章として「二つの怪物」を誕生させたのである。
今回にて、第七章は完結です。
つぎの八章から時間軸が戻り、六章からの続きになります。