153話・カプセルの中で、アホ毛は揺れる
だが、それでも…
決して、少女たちの「祈り」は、無駄ではなかった。
僅かな希望が、天にまで届いたのか?
小さな手を合わせ、祈り続けた日…
とおい…遠い「異次元」から。
一人の少女が、彼女らの元へやって来た…
液体の中で、二本のアホ毛が揺れて…「黄金の瞳」が、ひっそりと輝く。
その黄金の輝きに、少女たちは希望を見出し。
幼き目を輝かせながら、その名を口にした。
「シュタハス」…と。
結局、ヘルツは…
「シュタハス」本人さえも、被検体の一人として扱い。
これまで通り、彼女の事すらも「37号」と番号で呼んだ。
冷たい現実に、苦渋を飲まされてきた結果。
ヘルツの記憶から、かつての「幻想(思い出)」は遠のいており。
その「白髪」を見ても、その「黄金の瞳」を見ても…
幻想で出会った…あの笑顔を、思い出す事はなかった。
この日、37番目の被検体が現れた…月の夜。
計画の主任である彼の元に、一通の指令が下された。
『幻想領域・シュタハス…計画の中止』
指令の書類をグシャグシャにして、発狂してしまうヘルツ…
ケラケラ、と笑い続ける姿は、正気の沙汰ではなく。
錯乱したその手には「注射器」があった。