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14話・エルフの女剣士

アントスは、ディアトロ騎士団に入って、ずいぶん長いが。

彼には、戦士としての才能が、まるで無くて。

実際、彼自身も諦めていたところに。


何故かだかリピスの目にとまり、この騎士団で仕事をする事になる。


与えられた役割は、雑用の荷物持ち。

それでも、アントスは必死に、仕事に専念してきた。


だから今も、騎士団から、追い出されずに済んでいる。

 

アントスの真上にて、さんさんと太陽が輝く。

激しい猛暑は、重い荷物には天敵で。

額から汗が流れ、ついつい足も遅くなる。


「トロいぞォ。荷物持ち」

弓兵のロイドが、振り向き、アントスを急かしてくる。


アントスだって必死に、追いかけているのだが。

中々、距離が縮まってくれない。


せいぜい荷車の尻に、張り付いているのがやっとだ。

 

エルフのリピスが、アントスを気に掛け、駆け寄ってくる。

「荷物、持とうか?」

緑の瞳を緩め、リピスが軽く笑った。


彼女は普段、他の連中と絡まない。

だが、アントスにだけは、何故だか、友人のように接してくる。


彼女に気にかけられ、騎士団三人の視線が、こちら(アントス)に集まる。

とくに、リーダーである、ディアトロの視線が鋭かった。

 

自分は、ただの雑用、彼らの気分を害したなら、きっと騎士団から追い出される。


職を失えば、途方に暮れることになる。

それだけは、絶対に避けなければ。

 

アントスは緊張しながらも、いつもの口調で返した。

「いっ、いえ。お気になさらず」


リピスは「そう…」とだけ呟き、彼から視線を外した。

 

彼女はいつも、アントスに手を差し伸べるのだが。


毎度、自分の立場を気にして、つい距離を離してしまう。

さすがに、アントスは引け目を感じて、せめて礼だけは言おうと。


「あ…あのぅ」

小さな声で、リピスの背中に、声を掛けてみる。

こんな小さな声でも、彼女はいつものように、振り返ってくれる。


フワリと金髪が揺れ、アントスの様子を伺うと。

軽く微笑み、彼の言葉を待った。


その笑顔に、緊張がほぐれ、アントスの体から力が抜けた。


「ありが…」

ありがとう、と言おうとした瞬間、リピスの表情が豹変した…

彼女は、緊張した視線で、晴天の空を凝視すると。


「さがって!」


疾風のメイスを構えて、アントスを庇うように立つ。


リピスの視線は太陽…


騎士団の三人も、彼女の様子に気づき、警戒態勢に移った。

 


すると、何やら巨大な影が、太陽を覆い隠した。


 大きな影には、二つの翼。


「嘘だろ?!あれって」


弓兵のロイドが、体を震わせる。


その姿こそ、まさしくドラゴン。


リーダーのディアトロは、冷や汗を流しながら、身を守るように盾を構える。


魔導士のソエフは、杖を握り絞めて祈った。


「破壊と烈火の龍…ああ、シュタハス。お助けを」


破壊と烈火の龍…

かつて、世界を震わせた、破壊の化身そのもの。

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