147話・白髪の少女
踊る花たちは、少年を歓迎してくれて。
彼には、沢山の友達ができた。
少年は、彼ら(花々)とのお喋りに心を弾ませた。
だって、あらゆる話が、ロマンに満ち溢れていたから。
だが…
しばらくする内に、微かに寂しさを感じていた。
ここには、この世界には「花」しかいない。
自分と同じ「人間」は、一人もいない。
だから結局…
彼は独り「孤独」を噛みしめながら「帰り道」を探した。
いくら歩いても、いくら走っても。
地平線の果てまで、花の絨毯が続いてゆく。
一面に広がる、純白の花壇を、少年はひらすら進む。
やがて、足も痺れてきて。
彼は疲れ果て、白い絨毯へと倒れた。
その小さな体を、白い花たちが、優しく受け止める。
倒れた拍子に、フワリと…散りゆく花びら。
そして、花弁が弧を描きながら、舞い落ちたとき。
『何者』かの足音が、少年の意識を惹きつけた…
その足音は、少年の隣で止まり。
「ふぅ…」
まるで鈴のような、少女の声で…一つ呟いた。
「面白いモノ、持ってるね?」
声の主は、どうやら一人の少女らしく。
相手(少女)の姿に、少年は「何故だか」安心してしまった。
癖っ気の強い、純白の髪。
頭の上に、ピョコンと出た…二本のアホ毛。
そして、太陽のような、黄金の瞳。
体格からして、彼(少年)よりも、少し年上程度だろうか?
身長だって、頭一つ高い位だった。
彼女の服装は、スレンダー形の、純白のドレス。
ドレスの生地は薄く、体のラインがクッキリと浮き出ている。
細い首には、白いストール(ストラ)をかけており。
このストールは長く、首から足元まで届いていた。
一見すると、奇妙な雰囲気の少女だが。
少年は不思議と、緊張しなかった。
「宝物さ。シュタハスっていう絵本さ」
「絵本?」
白髪の少女は、黄金の瞳を丸くして、オウム返しをする。
「そうだよ」と頷いて、彼女に絵本を見せてあげた。
少女は、絵本を優しくめくりながら、表情を緩ませた。
「『こんど』は、絵本…なのね」
最後のページまで、読み終えて「ふぅ」と一息つく。
「ねぇ、きみ」
そして…黄金の瞳が、ユラりと少年を見た。
「帰りたい?それとも…」
「ずっと、ここにいたい?」
その口調はまるで、赤ん坊に、話しかけるみたいだ…