143話・弾幕は救済なのか?
だが、しかし…
風の猛攻を、受けようとも。
重騎兵にとっては、悪戯程度でしかない。
まるで、ハエを払うように。
鉄球のような手で、いとも容易く、豪風を振り払った。
相手(重騎兵)の鎧には、一つの掠り傷すらない。
もはや、力の差は歴然だった…
「くっそ…」
苦々しく呟きながら、身構えるアントス。
そして、一瞬の間すら空けず。
重騎士のターン(攻撃)が始まった。
感染していても…その動きは、砲弾の如く、速く、猛烈であった。
「は…やっ」
彼が反応した頃には。
射程範囲まで、重騎士が接近してきていた。
当然、反撃する暇などない、少女の肉壁になるので精一杯だ。
そして、覚悟を決め、アントスが目を閉じたとき…
ドドドドドドドドドドドドドッ!
怒涛の「銃声」が、彼の鼓膜を叩いた。
視界一杯に広がる、幾多もの閃光。
衝撃が連鎖して、脳裏までもが揺れる。
瞬間…
重騎兵の装甲が、紙くずのように、砕け散ってゆく。
一瞬にて、合鉄の体は、蜂の巣と化し。
合鉄の兜が、粉々に吹っ飛び…屑鉄と化した。
ドドドッドドッドドドッ…
銃声のテンポは、次第に遅くなり、少しずつ静まってゆく。
そして、揺れも収まり、シーンとした静けさだけが残る。
アントスは、冷や汗を拭いながら、天井を見上げた。
すると、薄暗い天井の片隅にて…ピカリと、銃口が光っていた。
「機関銃…なんだって、こんなところに?」
この機関銃から、煙が現れており。
さっきの機銃掃射は、コレによるモノに違いない。
子供たちが「眠る」この空間に…こんな武装が、必要なのだろうか?
だが今は、考えゴトを、している暇などない。
だって、弾幕の的になっても、重騎兵は倒れていないから…
アントスは、少女に「そこにいて」と、優しく伝えて。
トドメを刺すために…
重騎兵へ、距離を慎重に詰めていく。




