139話・研究所の影
液体の中で眠る…少女の顔に、生気は感じられない。
血相のない、その表情を見ていると。
アントスは、いても立ってもいられなかった。
何とかできないか…と。
ガラスの表面に、手を這わせた…そのとき。
なんらかの「数字」が、ガラスの表面にて映されていた。
その数字は「NO1」といった、番号らしく。
数字の下に、装置が備わっており…ピィーという、機械音を鳴らしている。
そして、この音(機械音)は、なんだか「死」を感じさせた。
同様の筒が、辺りにも並列しており。
どのガラスにも、NO2、NO37、など…番号が表示されていた。
いたる所から響き渡る…ピィーという、不快な機械音。
そして…人形のように漂う、子供たち。
もしかして、この子たちは?
「死んで…いるのか…?」
無意識に呟き、アントスは、ハッ…と言葉を飲み込んだ。
縁起の悪い、暗い思考を振り払いながら。
一つ、また一つと、筒の状態を探ってゆく。
ここで、アントスは、とある事に気づいた。
筒は全部で、40機ほど。
その中で、約3機…「空っぽ」の筒があったのだ。
それは「NO34」~「NO37」までの筒だった。
この4機だけ、ガラスの中が空っぽ…一滴の液体すらない。
空虚と化した、筒を見たとき。
何故だか、シュタハスの瞳が、彼の脳裏に浮かんだ。
この感覚により、むず痒さを感じる…が。
また、更なる「物音」が、アントスの耳に飛び込んできた。
この物音は、さっき廊下で聞いた。
あの「余震」に近く、音のボリュームを増してゆく。
唐突かつ、突然の「衝撃音」…思考する暇など、許されなかった。
音の主は、こちらに接近しているのか。
ガシャン!ガシャン!ガシャン!
合鉄が激しく、衝突し合う音…
アントスは危機を感じて、隠れられそうな場所を探した。
合鉄の音は、向かいのドアから鳴り響き。
衝撃音が響く度、ドアがベコベコに歪んでゆく。
間違いない…
何らかの「化物」が、ドアをぶち破ろうとしている。