133話・裸足の歩調
「フロラシオン」の名は、一章の「11話」にて登場しています。
触手の攻撃により、シュタハスの体が、ふっ飛ばされてしまう。
その小さな体が、白い花畑に落ちて。
二本のアホ毛を揺らしながら、ゴロゴロと転がっていく。
純白の花たちが、彼女の絨毯となるが…
「ッ…ヴッ!」
衝撃を殺しきれずに。
小さな後頭部を、激しく打ちつけてしまう。
だとしても、ヨロけながら、立ち上がるシュタハス。
頭を打ったとき、鈍い音はしたが。
持ち前の「再生能力」で、すぐに痛みは引いてくれた。
花弁の舞う、視界にて…注射器を片手に持つ。
そして、赤髪の少女が眠る「赤い要塞」を見た。
要塞との距離は、遥かに遠のいてしまった。
脇腹を抑えながら、何とか行動に移す。
だが、相手(触手)の攻撃は、一切の容赦なし。
赤い雨(触手)が降り注ぎ、彼女のもろとも、白い花畑を荒らしてゆく。
触手の猛攻によって、白い花弁たちが荒れ狂う。
一面の世界が、真っ白に染まる。
小さな手で、花弁を払いながら…シュタハスは、後ろへ振り返った。
そして、赤い要塞…「フロラシオン」に、背中を向けてから。
白い花弁の渦の中へ、その姿を消してゆく。
何とか、白い花壇から撤退して。
シュタハスは、ドームの正面ホールに辿り着いた。
しかし、正面入り口の、ガラスのドアは、無残な状態だった。
何者かに、壊されたのか?
ガラスの破片が、足元に散乱している。
彼女は裸足。
それでも、ガラスだらけの床を、躊躇せずに進んでゆく。
足を進める度、ガラスの破片が、足の裏に突き刺さる。
歩く度に、足元が血で染まるが。
その黄金の瞳は、平然としたまま。
止まる事なく、ガラスの破片を踏みつけながら、外を目指した。
散らかっている事以外、障害と言える邪魔は無かった。
ドームから出ると、シュタハスは、とある施設を探した。
どこを歩いても、緑の霧だらけ、そして視界は最悪。
しかし、緑の世界でも、黄金の瞳は輝き。
ウイルスが充満する、霧の中で…彼女は平然としていた。
そして、凛としたまま、施設の「入り口」を目指す。
彼女が目指すは、とある一区「コントロール室」だ。