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130話・蠢く血管


 研究所の一帯は、緑色の霧に包まれており…

辺りの空気すべてが、どんよりと濁っていた。


 そんな緑一色の視界で、巨大なる存在が一つ。

「水の巨人」が、地を揺らしながら前進してゆく。


緑の霧(Pウイルス)のせいで、視界はゼロに等しく。

進んでゆく内に、右も左も分からなくなった。


それでも、何かを探すかのように、さ迷い続ける巨人。


 すると、巨人の右手から…

ヒョイと…二本の「アホ毛」が覗いた。

そのアホ毛の持ち主は、巨人の手の中から、外の様子を伺っている。


癖っ気の強い、白髪を揺らして…

「シュタハス」は、鈴のような声で呟く


「ふぅ」


巨人の手に、囚われようとも、黄金の瞳は揺るがず。


 「次の展開」に備えて、彼女は準備に移った。


小さな体を屈め、手で白髪の頭を覆う。

その姿勢はまさに、何かの衝撃に、備えているようで。

丁度、彼女が屈んだタイミングで…巨人の体勢が崩れてしまう。


 ヒュッ、ヒュッ、ヒュウ…軽快な風音が、緑の霧に走る。

それと同時に「何か」が巨人へと襲いかかり。

水色の巨体(巨人)に、次々と風穴が空いた。


 その襲撃者の正体は「触手」のような物体で…

一見すると、植物の蔦のようだが。

その色彩は、血管の如く「紅く」鮮明だった。


この触手は、霧の中でも、紅く輝いており。

一本、十本、百本…と、紅の閃光(触手)が、豪雨の如く降り注いだ。


 触手の猛攻は、いとも容易く、巨人を追い込んだ。

押されまいと、抵抗を試みる巨人。 


霧によって、視界が悪くとも。

触手が飛んでくる方向から、相手の位置くらいは分かる。


その風穴だらけの巨体を、獰猛に動かしながら。


 水の巨人はついに、とある「建物」へと辿り着いた。


ソレは「ドーム状」の建造物で…

円形の屋根は、激しく損傷していた。

壊れた穴から、無数の触手たちが、顔を覗かせている。


 シュタハスは、朽ち果てたドームを見おろす。

そして、衝撃に備えて、巨人の指にしがみついた。


立ちはだかる山の如く、水の巨人は進撃する。

だが、触手たちの反撃は、何段階も格上だった。


 無数の触手で、水色の体を縛りつけ…いとも容易く、巨人をひっくり返した。

 

ズゥオオオオオオオォン!


水の巨人が、倒された事によって…

研究所の地が、グラリ…と揺れた。

 


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