129話・研究所へ
今回で5章が完結です。
凍りついた柱の影から、レ二ズが顔を出す。
そして、お得意の口数で、グラスの気を引きつけた。
「ほらほらぁ~トカゲくぅ~ん」
氷の世界に、馬鹿らしい「煽り声」が広がり。
それに激怒したグラスが、氷結のブレスを連射した。
怒涛に繰り出される必殺技…
殆どの柱が破壊されて、レ二ズも一緒に吹っ飛ばされる。
隠れ蓑を失った、ゴブリン…
腹立たしい虫けらを見つけ、グラスが突撃してくる。
ドラゴンの猛攻を、ただ一人で、引きつけながら。
レ二ズは、前へ、前へ、ひたすら走り続けた。
一歩一歩、駆け抜けるたび。
つい、可笑しくて…頬が緩んでしまった。
「なあ!ワイズッ!」
世界の夢を、誰かの夢を…守ること。
「やっぱ、馬鹿だよッ!お前!」
思いっきり叫んで、喉が痛くなって。
「あははは!」
もう二度と、笑う事すら出来ない「相棒」の分まで…
薄汚いゴブリンは、精一杯、笑ってみせた。
「馬鹿だよなああ!オレもおおお!」
今はなき、相方と共に…
レ二ズは、ドラゴンの囮役に徹した。
ドラゴンのフラムは、ズタズタの翼を広げて。
残った力を絞り出し、命一杯、飛び台を蹴った。
その眼光は、広大な夜空にあり。
「絶対に飛ぶ」という、強固な意志で燃えていた。
だが、しかし…その熱意は、残酷な現実に通用しない。
飛び台から、降りると同時に…フラムの視点が、反転してしまう。
やはり、こんな状況の「飛行」など、不可能なのか?
アントスを乗せたまま、真っ逆さまに、急降下してゆく。
墜落したなら最後「即死ルート」待ったなし。
アントスは、目を閉じることなく、フラムの背にしがみついた。
叫びも、動揺もするものか、ただ仲間を信じる…それだけだ。
その思いを受け止めるように。
フラムの翼が、夜空の風を、真っ向から受け止めた。
すると、下からの追い風が、ドラゴン(フラム)の巨体を支えてくれた。
地面スレスレ…僅か、数ミリで。
破壊と烈火のドラゴンが、一気に上昇してゆく。
その勢いに乗せて、みるみる高度を上げてから。
星々の輝く夜空にて、フラムは、ボロボロな翼を羽ばたかせた。
フラムの背中で、アントスは、冷たい風を肌で感じた。
開花の森は、果てまで続く…
そして、目指すは「研究所」。
これから、一体…
何が、待っているのか?何を、すればいいのか?
ただの一般人には、想像すらできない。
次の6章からは「研究所」が、舞台となります。
また、研究所の過去は「1章」にて語られています。