127話・モブキャラよ、君に託そう
グラスの殺意を、受け止めながら。
フラムは、アントスの状況を認識した。
一方、レ二ズは…
とある「小さなモノ」を、ポッケに忍ばせてから。
倒れたアントスの元へ駆け寄った。
アントスは瀕死で、もう殆ど意識がない。
「モブ(雑魚モンスター)を、庇うバカがいるかよッ!」
灰色のゴブリン(雑魚モンスター)は、おバカな男を担いで…
バカバカしい展開を、鼻で笑ってみせた。
一体、どこの世界に…
ゴブリンを助ける「馬鹿野郎」がいるのだろうか?
ただ、アントスという、物差しで見ていたら。
「人間も悪くない」と…レ二ズは、らしくない事を思った。
そんな可笑しな事を、考えながら。
「おいっ、フラム!」
トカゲ…ではなく「フラム」と、戦友の名を叫ぶ。
「またせたな!コイツの出番だ!」
そして…怒鳴りながら、ポッケから「何か」を取り出した。
その「何か」は、虹色の輝きを放ち。
レ二ズの手で、神々しく輝いていた。
そう…彼(レ二ズ)の手には「六華の種」があった。
そして、本来の目的通り…
レ二ズは「六華の種」で、フラムを回復させようとしている。
だが、その選択に、フラムは強く反対した。
「違う、そうじゃない!」
「この世界を、救うのは『誰』だ?!」
そう怒鳴られて、そう叱られて、レ二ズは一般人を見た。
だが、このとき。
「六華の種」の輝きに気づいて、グラスの怒りが、有頂天を突破する。
再装填される、必殺技、標的はアントスとレ二ズ。
青白い光りが、口の中で輝き。
腹の底から、氷結のブレスを吐き出してゆく。
そして、氷結のブレスが、レ二ズに当たる直前…
フラムが翼を広げて、二人の盾となった。
包帯だらけの体で、グラスの究極技を受け止める。
氷結のブレスに、全身を裂かれながら、フラムは必死に叫んだ。
「はッ、はやく…ソイツを治せェエエエエーーーーー!」
その気迫に圧されて、レ二ズは、己の手にある「六華の種」を。
「ああ、クソッタレ」
破壊と烈火のドラゴンではなく…
ただの一般人に…アントスに「使う」ことを選択した。
ゆっくり慎重に「六華の種」を、彼の胸へ乗せる。
すると…
六華の種が、みるみると、胸の中へと沈み込んでゆき。
パァーと、花火のように、アントスの中で拡散した。
そして、虹色のオーラが、彼の体を込む。
瞬きもしない内に、瀕死の体が、みるみる回復(再生)してゆき。
左脚の膝も、凍りついた背中も…すっかり元通り。
体の底から、力が湧き出てくる。
すぐに、アントスの視界も回復し。
鮮明に映った視界にて、血だらけのドラゴン(フラム)の姿があった。