表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
125/176

124話・傷だらけの翼


 竜の眼は、すぐ目の前…

入り口の前に立ち、アントスは、その門を見上げた。


塔の如く、山のような門。

とても、自力で動かせる代物ではない、が。

幸いにも、門の扉は開放されており。

出入りだけは、心配いらないらしい。


 レ二ズの説明によると…

とある「いざこざ」が、以前に起きたせいで。

それからずっと、扉が「開きっぱなし」とか。


 二人の訪問者を、凍りついた空気が出迎える。


直線の通路に、赤と青の煉瓦が、敷き詰められており。

その果てに、高台らしき建造物が、ぼんやりと見えた。

そして、円柱の柱が、通路の両端に並び…

幾多もの柱が、列を成していた。


 だが、しかし…なによりも。


この環境こそが、群を抜いて異質だった。


煉瓦の床、円柱の列、竜の眼…全ての空間が。

凍りついた「氷の世界」へと、成り果てていたからだ。


鋭利な氷柱が、柱からブラ下がり。

銀幕の氷が、煉瓦の床を走る。

もはや、空気すらも凍えて、冷たい霧だけが立ち込めてゆく。

 

氷の世界(竜の眼)を前にして、踏み止まる二人…


 ついさっき、昇華階段を、昇っていたとき。

突然、神殿全体を揺るがした「ドラゴンの唸り声」。

あの唸り声が、頭の中で、チラついてしまう。

 

それでも、進むしか道はない、何故なら…


 銀幕の床の向こう。

わずか、数十メートルほど先に、一輪の光りがあったからだ。


その輝きこそ「六華の種」であり。

六華の種は、まるで見せつけるように、虹色の光りを放っている。


虹色の輝きを、遠目から、レ二ズが観察する。


「罠じゃん。見え透いてんなあ」


適当に情報を探りながら、アントスの怪我を気にかけた。


「走れっか?無理なら…」

ここで待ってろと…アントスを、安静にさせようとするが。


 アントスは自ら、膝の包帯を解き、己の足だけで立ってみせた。

当然…左脚は完治していない。

それでも膝の傷は、ワイズの治療のお陰で、少しだけ塞がっており。

走るだけなら、何とかなるかもしれない。


「いこう」


アントスの無茶に、レ二ズは溜め息をつくも。

アントスの決意に、反対することなく。


 こうして、モブキャラ二人組は。

時の停止した、氷の世界(竜の眼)に、足を踏み込ませた。



 


 烈火のドラゴン「フラム」は、夜空の下で一人…

遠くの領域、シュタハス神殿を睨んでいた。


彼ら(アントスたち)が、神殿に向かって、かなり時間が経過した。

それ以降、一向に帰ってくる気配がない。

シーンとした時が流れてゆき、嫌な胸騒ぎがしてくる。


 彼にとっても、もはや我慢の限界で…

ワンチャンス…包帯だらけの翼を、大きく羽ばたかせた。


すると…


ほんの少しだけ、ゆっくり、ゆっくりと。

フラムの巨大が、夜空に向かって上昇していく。


翼を動かす度に、体中の傷が悲鳴を上げる。


だが、それでも。

ただひたすら、大きく、大きく、翼を動かし続けた。

治療係の「ゴブリン兵」もうとっくに、前線から立ち去っており。

今このとき、フラムを、邪魔する者はいない。


 やがて、烈火のドラゴンは、夜空の上まで到達し。

ボロボロな我が身を、引きずるように、フラフラと飛んでいく。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ