116話・岩石から手足がッ!
アントスは、瓦礫の奥から、敵を睨みつけた。
そして、起き上がって、風のメイスを回収すると。
なんとか、瓦礫から脱出できた。
まだ、敵(巨大スライム)には、見つかっていない。
隠密で奇襲をかけるなら、今しかない。
不意打ち作戦を思いつき「隠れ場」を探すアントス。
すると、彼の視界に「大きな岩石」が見えた。
この岩は、巨大スライムよりも大きく…身を隠すには十分。
しかも都合よく、この岩と自分の位置は、そう遠くなかった。
目先の目標を決め、立ち上がるアントス。
ところが…
左足に力を入れたとき、電気のような激痛が走った。
「うッ」
異常な激痛に、アントスは、左足へ視線をやる。
すると…まるで刃物のような瓦礫が、左足の膝を貫通していたのだ。
大量の出血で、膝から爪先まで、真っ赤に染まり。
歩く度に、ボタボタと血が落ちる。
左脚を引きずりながらも、やっとかっと…岩の裏側に隠れる。
そして「大きな岩」の後ろから。
敵の様子を、確かめようとした…そのとき。
ゴォオオオオオオン!
「大きな何か」が、アントスの隣で暴れた。
床の模型(十字架)が、爆散してゆき。
山全体が、津波のように揺れ動く。
アントスの体は、アッサリと宙に放られてしまい。
吹き飛ばされながら、彼は「爆発した場所」を目視する。
瞬間、目に映ったのは、ついさっき隠れた「大きな岩」で…
ただの岩から…手、足、胴、頭と、人型に変形してゆき。
ついには「岩石のゴーレム」に変形した。
えっ?!岩が、変身…した!
そう混乱しながら、アントスは、泥団子のように転がっていく。
岩石のゴーレムは、まるで城壁のようで。
その図体は、巨大スライムをも上回る。
ゴーレムは、巨大スライムに敵意を向けると。
鬼神の如く、緑色の塊へ突撃してゆく。
そのタックルは、砲弾の如く凄まじく…
圧倒的な猛攻をまえに、巨大スライムが、木端微塵に爆散した。
感染スライムの完全体を、たった一撃で葬り
次の標的を探すように、ゴーレムは、視線を泳がせる。




