115話・十字架部屋
十字架部屋は「111話」にて、名前のみ登場します
アントスが落ちた?!
ここまで激しく、崩落してしまえば…
もはや、アントスの安否は、定かではなかった。
仮に無事だとしても。
下の階は「十字架部屋」と呼ばれる、最も危険な領域だった。
何故、危険かと言うと…
感染が広まった当初、感染者を個室に「隔離する」必要があった。
それで、選ばれた場所こそが、大量の十字架がある空間…
「十字架部屋」と言うわけだ。
今となっては、そこ(十字架部屋)は感染モンスターの巣窟であり。
シュタハス神殿の「地獄」とも呼べる場所だろう。
十字架部屋だけは、一番避けたかった。
なのに、こうも不幸が重なるとは…
歯ぎしりしながら、レ二ズは、思考を回転させる。
「くそったらあ!」
運の悪さに唾を吐き、崩落した方へ向かおうとする。
「いや、僕のほうが近い!君はさきに、昇華階段へ!」
ワイズの声が率先して、アントスの救出を請け負った。
「アントスを回収して、追いつくから!」
確かに、ワイズの言う事にも一理ある。
ただのゴブリン(レ二ズ)では、彼を救出する技量は無い。
だが、器用なワイズだったら、一筋の可能性がある。
だから、レ二ズは…
「あとは頼んだぜ!スパイダーメン!」
アントスのことを、相方に任せて、一足先に昇華階段を目指した。
落ちた衝撃によって、意識が揺れる。
山盛りの瓦礫が、彼の背に圧しかかり。
ズッシリとした重さに、体から縛りつけられていた。
何とかもがいている内に、瓦礫の隙間が開くと…
その隙間から、外の様子が、微かに見えた。
周囲一体、どこを見ても、十字架らしき模型が積まれており。
細々とした模型(十字架)が、積み上がっており、巨大な山と化していた。
そして…
共に落下した、巨大感染スライムは、山の頂上にて。
そのドス黒い緑色を、蠢かせている。