110話・ひっぱって♪ぶつかって♪もう一回♪
「ちっ、鍵がいってらぁ」
レ二ズが、ペタペタと…石板の扉を調べる。
そんな彼の様子を、二人は、背後から眺めていた。
扉の状態は悪く、古びた苔がついており。
その高さは4~5メートル程、裏口にしては、割と大きい。
話によると、この扉は、自動式に起動するらしく。
石板の表面に触れれば、動くはず…なのだか。
幾ら触っても、ビクともせず、故障しているのは見て明らかだ。
「こうなりゃ」
レ二ズはヤケクソ気味に、扉へ突撃した。
「うおおぉ!」
しかし、間抜けなゴブリンは、逆に弾き返された。
「ぎゃあ!」
大げさな悲鳴を上げて、跳んでゆくレ二ズ。
アントスとワイズも、彼の考えが、何となく分かった。
どうやら、石板の扉を無理やり、こじ開けようとしているらしい。
そうと分かれば、アントスも、自ら便乗する。
「うおおぉ!」
平凡な男はヤケクソ気味に、石板の扉に挑む。
「ぎゃあ!」
大げさな悲鳴を上げ、跳んでゆくアントス。
地面に倒れる、アホ二人組に、ワイズは呆れながら…
構うことなく、扉の前に立った。
そして、口から、クモの糸を出すと。
その糸を、扉の石板に固定させる。
白銀の糸がキラリと光り、一本の縄が石板と繋がった。
そして力強く、縄を引っ張ってゆく。
少しずつ、ほんの少しずつ、石板が動きだしてゆく。
徐々に奥の暗闇が露わになり、歪んだ空気が漂ってきた。
アントスとレ二ズは、起き上がると、暗闇の奥を覗いてみる。
この先に待つ、不可解な暗闇に、アントスは不安を感じた。
「真っ暗だ。何も、見えないよ」




