109話・正面突破なんてNG
「保管庫」は、四章の96話にて登場します。
三人(アントス、レ二ズ、ワイズ)は、茂みの中に隠れ潜んだ。
そして、茂みの隙間から、目的の場所を見定める。
高く聳える、ピラミッド状の建物…
覆い茂る葉の隙間から、アントスは目を凝らす。
「シュタハス神殿…」
幸い、時刻は早朝。
朝日が昇って、視界が好調、情報取集は容易だった。
神殿の一帯には、モンスターたちの群れが蠢き。
ゴーレム、ゴブリン兵、オークなど、多種多様の種族がいた。
だが、しかし…
彼ら(モンスター)のどれもが、虚ろな視線で。
生々しい「緑の液体」を、口や耳から垂らしていた。
ドロリ…と輝く、醜い液体。
それを見て、アントスは、乾いた唾を飲み込む。
「モンスターまで『感染』するのか?」
レ二ズが、あたかも当然のように答える。
「そりゃオマエ~雑魚スライムから、伝説のドラゴンまで、皆仲良くゾンビデビューさ」
「たくっ、良くできた『ウイルス』だよなぁ~」
この現実に、アントスは、ウイルスの脅威を垣間見た。
一方レ二ズは、後方の相方に、意見を求める。
「隠密重視だな…ルート変更だ」
「うん」と、即答で返すワイズ。
そう、二人(レ二ズとワイズ)とも、何となく察していた。
この視界に映る「敵」が、想像の桁を越えていることを。
ゆえに、ここからの正面突破では…
ゾロゾロと「感染者」がゾロゾロと集まり、包囲される可能性が高い。
だから、理想のルートは、俊敏かつ隠密な通路。
やっぱりな…と、レ二ズは、一人で納得する。
「そんじゃ、ま…『保管庫』にすっかぁ~」
「ああ、ベターだな」
ワイズも賛同して、「保管庫」のルートから侵入する事となる。
アントスにとっては、この神殿に来るのは「初見」。
ゆえに、訳も分からず、少しばかり混乱した。
「ほ、保管所?」
彼のオウム返しに、レ二ズは直入に答えた。
「まっ、神殿の裏口だな」
それ以上、何も説明することなく。
二人(レ二ズとワイズ)は、脇道に入ってゆく。
微かな不安を抱えながら、アントスも二人の後に続く。