↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハイスピード・アナリシス ~異世界で解析しまくる男。  作者: 愛野万之介
第一部 知は愛、愛は知。
11/162

第11話 そしてウインウインゲーム。



(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)



目の前に、あの仮面が浮かんでいる。



シャドウ・P・D……。



オンリーワンワールド(一人きりのボッチ世界)が発動したことを、俺は知る。


二回目の謎現象。

思考世界、───そしてシャドウ。



周囲は闇に包まれている。

俺の身体も、以前と同じように、肉感的に存在せず、だが確かにそこにあるという、非現実的な感覚に変化している。

この世界も、目の前の男も、もはや夢ではないと認めるしかないのだろうか。



そもそも、この世界を、オンリーワン、一人きり、ボッチ、と、一人という意味の言葉を並べ、皮肉を込めて俺が呼ぶには理由がある。


心の病レベルの『長過ぎる深い考え事』は、俺が一人きりでいる時間が長すぎたから、発病したようなものだ。

ワイワイと複数人で遊んだり、会話したり、スポーツしていればそんな長く考え事をしていられるわけがない。


一人で何もせずにいたとしても、脳は動き続ける。

何も考えたくなくても、思考を無には出来ない。

おまけに俺の脳は優秀過ぎた。


気がつけば、俺の脳は刺激を求めて、俺の意思なんて無視して勝手に動くようになってしまった。


その思考世界が、まさかこんなことに。



だが今は……。

シャドウにかまっている場合ではない!

アリスを探さなくては!



「落ち着きたまえ、Mr.リョウスケ。君も知っているだろう? この世界の強制力を。自由な出入りが出来る場所ではない」



この世界の強制力?

自由な出入り?

そうなのか?



「君の思考は、暴走したら止められないんだろう?」



ちっ。知るかと言いたいが、納得。

オンリーワンワールド(1人きりのボッチ世界)は、発動も終了も俺の思考任せ。

俺の脳が超・高速思考(ハイスピードアナリシス)した瞬間に始まり、思考が終わると同時に終了する。

つまり、俺は自分の意思でここから出ることは叶わない。



「それにしても、これ程早くに再会するとはね」



俺はそう言われて、じろりとシャドウを睨む。

するとシャドウは顔を傾けて、仮面の笑みを返してよこす。



「そう睨まれても困る。君が迷子になった事と、私は無関係である」



まだ断じて迷子ではないが、確かにそれも事実。

だが、こいつのせいでここに来る事になったように思えて腹立たしい。


この悪霊、何故俺の中に入ってきた?

何故、俺はオンリーワンワールド(一人きりのボッチ世界)の間、こいつの相手をしなくちゃいけない?



「1000年の寂しさを理解して欲しい。私は死んだ後、誰にも気がつかれず、各地をさ迷い、人の中に入ったりして無為な時を過ごしてきたのだ。だからこそ、私は君に会えた事を、君が考えている以上に感謝している」



人の中に入る?

やっぱり悪霊じゃないのか?



俺はふと、違和感を覚えて、オンリーワンワールド(一人きりのボッチ世界)を眺める。


圧倒的な漆黒が広がる世界。


その先に何かがあるなんて、到底考えられないほどの深淵の闇が広がっている。

この世界自体が本来はあり得ない非現実的な世界なのだということに、改めて気が付く。


この場所は、思考世界であり、物質的にも、時間軸も別次元。

軋むような硬質な気配。


居心地がいいなんて思えない、寂しい世界だ。


しかし、何かおかしい。


シャドウだ。

シャドウは前回同様に椅子に座っている。

背広を着こなし、足を組み両手を広げて、こちらを見ている。


だが、立ち上がりもせずに両腕を高々と上げているのは何故だ?

何を狙っている?


不気味だ。

疲れないのか?



「心配ご無用。とても、ここは刺激的で居心地がいいのだ。Mr.リョウスケ」



つい苦笑いをしてしまう俺。

本当かよ……。


ここで俺の思考から情報が入っているから、暇ではないにしても……。


そう言えば、俺が迷子になりかけているのを知っているって事は、やはり外の世界が見えているのか?



「残念ながら見えない。思考を通して伝わってくる情報だけだ。瞬間記憶した景色や物も、見るというより情報としての理解だ」



俺はシャドウの言葉に頷く。

こいつは、本当に俺の脳に住んでいるようだ。



「しかし、何故君が、迷子をそこまで恐れるのかは皆目検討がつかないな。そもそも、とっくに迷子の定義に当てはまっているのでは?」



俺は即答する。


断じて否!


迷子とは、家に帰れない事。

俺はまだ帰ろうとしていない。

そう、“旅”だ。


旅は知らない場所に行くだろう?

俺は旅の途中なのだ。

旅人に迷子という言葉は当てはまらない。



「くくく。Mr.リョウスケ、君はやはり面白い。了解だ。君は迷子ではない」



シャドウの身体が、笑っているのか小刻みに揺れる。



「確かに君の意識がここにあるときは、無意識で活動しているというのは本当のようだ。先程まで君の思考から流れてきていた情報が止まっている。だが、思考は活発化している。異常なほどの加速でね。数えられない程、人の中に入ってきたが、それらと比較にならない。いや、世界が違う」



俺は深く考え事をすると、周囲が見えなくなり、ただ思考の海に沈んでいく。

それがオンリーワンワールド(一人きりのボッチ世界)。


その間、俺は意識がなくなるが、身体が勝手に動いてくれる。

簡単な会話や食事、移動は無意識に行う。

シャドウの言う通り、思考が最も活動しているのは、まさに今。



……シャドウ。一つ質問しても?



「どうぞ?」



ちなみに今、俺の思考は何を考えている?



「アリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリス……だ!」



……やはり、思考が読まれるのは恥ずかしい。



「そうそう、笑えたぞ。Mr.リョウスケ」



ピクリ。

俺のこめかみが脈打つ。



「まさか、とっくに試験を合格していたとはな」



シャドウ……。


狡猾なシャドウの手口。

怒りが込み上げてきて、思わず歯を剥き出して睨む俺。



「まてまて。Mr.リョウスケ。誤解しないでくれ。こう言ってはなんだが、君は考えすぎだ。それも悪い方向にな。人を疑いすぎていないか?」



誤解?

考えすぎ?



「確かに私の魔力が鑑定石に反応する可能性はあったが、あくまでも可能性。そもそも幽体になった私の魔力なんて不確かなものに、鑑定石が反応するなんて思いもしなかった。計略でも駆け引きでも遊びでもない」



俺は首を振る。


シャドウの言葉は偽り。

この手の奴は、都合よく言葉を積み上げる。

父のように。



「ふうむ。ただ私は純粋に、君がどう乗り切るか見たかったのだのだがな。そうそう、チリツモ作戦は良かった! まさかペーパーを食べようとは! この1000年、様々な人物や景色を視てきたが、たまらない、君はたまらないよ!」



声が途中から、また笑うのを堪えるように震えているのがムカつく。


こいつ、絶対に追い出すべきだ。

出来るだけ早く!



「テストは合格だよ、Mr.リョウスケ。この思考の輝きにもひけをとらない君の魂の輝き、確かに見せてもらった。さすがこの思考世界の主たる人物!」



何が合格だ! 勝手な事を!



「異なる世界からやってきた非常にイレギュラーな存在、その上、君の思考と君の滑稽夢想な行動もこれまたイレギュラー! ああああ! これから君を中心に何が起きていくのか!」



嬉しくないし、何も起こさせない!

基本的に俺は目立つのは嫌いだ!


両手を上げたまま、ガクガク悶えるシャドウ。

き、気持ち悪い。



悪いが取引はする気はない。

損得ではなく、単なる俺の意思。

好き嫌い。

嫌な奴とは関わらないにかぎる。



それにしても、なんだろう。

椅子に座ったまま、両腕をあげてクネクネしたり、震えたりと気味の悪いシャドウが目障りである。

いい加減、その上げっぱなしの腕を下ろせないのか?



するとまた周囲から猛然と光の粒が立ち上ぼり、俺達を包むように渦を巻いて広がっていく。


俺の思考だ。

俺のボッチな毎日が育て上げた、成長しすぎた俺の思考。


眩しい光の中、シャドウの全体像が浮かび上がる。



「驚いたかね、Mr.リョウスケ。実は事情が変わってね……」



俺は眉を寄せる。


シャドウの身体が思考の渦に沈んでいるのだ。


光の激流に、椅子ごと浸り、固定されている。


目映い光のせいで、シャドウの上半身しか見えないが、問題はシャドウの両腕。

二本の腕は、上から伸びる白く輝く鎖に繋がれている。


思考の光が見えた途端に、今までのシャドウの奇妙な姿勢の理由が判明する。

こいつ、束縛されているのだ。



「君の思考は厄介だね。嘘も駆け引きも出来ないと、以前に言ったことを覚えているかい?」



俺は頷く。



「扱いやすいと思っていたら、逆だ。付け入る隙がない。私の最も苦手なタイプだ。知識の共有をしつつ仲よくしていたんだが……。何故か突然こうなった」



俺の思考が、シャドウを完全に拘束した?



「それでもこの光から様々な情報や思考は流れ込んでくるから安心したまえ。ただし私の意思で行動する事は完全に禁止されたがね」



禁止?



「例えば君が名付けてくれたSOMだ。あのようなものを勝手に作ったりとかね。調子に乗りすぎたのかもしれないが、私は何か悪いことをしたのかな?」



俺は理解する。


こいつ、あれだ。

俺と俺の思考から、同時に嫌われたのだ。


その結果がこれ。


俺は、俺の思考に拍手喝采。

思考世界は、シャドウの監獄と変化したらしい。



「君の知識から引用だが、人の脳は、都合の悪いことには蓋をする、見ないようにする機能があるようだね。私のこの有り様はそんなところかな。まあこの状況は別段悪くない。むしろ私にとっては良い方向とも言える」



こいつ、ドMさん?

超ポジティブ発言に、おののく。



「ド・M? フムフム、自虐行為に快楽を覚える性癖? 考えたこともないが……。Mr.リョウスケ、良い方向という理由は簡単だ。ここまで私が無力化されていれば、君は怖がらずにすむだろうから、余計な事を考えずに、もっと仲よくなれると思ってね」



どーでもよい。

とにかく、俺はここから早く外に行かなくてはならない。



「まてまて。せっかく来たんだ。ゆっくり語らおう。どうせしばらくは出らない。それに君の思考は今もアリスと合流する手段を思考している。この時間は無駄ではない」



また取引の話をしたいのか?

悪いが……。



「私とは取引しないつもりかな? だが、役に立つだろう。SOMはどうだね? 目から脳に送られてきた映像を脳が処理する際に、ノイズの様に簡単な信号を混ぜて認識させるシステムなんだが」



はぁ?

そんな事可能なのか?



「君に直接私の知識を送りたくてね。君の思考がなんとかそんな風にしてくれたらしいが、無事に知識を確認してくれてのだろう?」



ああ……。実際に体感したから認めるしかない。

俺の思考の協力を得て、可能にしているわけか。

あれは確かに面白いが、シャドウの監修がある以上は信じられない。



「監修? そうなのだ。君の思考は完璧主義で大層お怒りだ。私の知識は今後は君の思考のフィルタリングを受けて、一度、SOMBOXに格納される。そこからのみ、SOMには情報は反映されない。……本当は君と常時、SOで会話したかったんだごが、却下されたよ」



当然だ!

目の前で、ちょろちょろとシャドウの言葉がメダカのように泳がれたら邪魔すぎる!



「私は役に立つとは思うんだがね。どうだね? 知識や、それに私の魔力も、君の為になる筈だ。恩を少しでも感じないか? 何かしてあげたいとは?」



思わない。

まったく。

即断、即答、即ノーだ!

俺はきっちりと否定。

少しも感謝する気はない!



俺の拒絶に、シャドウはまるで動じない。




「そうか。なら仕方がない。Mr.リョウスケ。交渉や駆け引きが嫌いならば、今度はこういうゲームはどうだろう?」



ゲーム?

切り替えの早いシャドウの返事に戸惑う。



「ゲームの名は……ウインウインゲーム、だ」



は?

ウインウインゲーム?

嫌な予感しかしない。


そんな事より、ここから早く出なくてはならない。

シャドウと遊んでいる場合ではない。


……というのに、シャドウの言葉は続く。




「ルールその一。いや、ルールは一つのみだ。君が私のために何かしたいと思うまで。ただ私は、君に恩を売り続ける。それだけのゲームだ」



恩を売り続ける?

それだけのゲーム?



「君に恩を売る。その恩が、君の中で本当に恩となるまで、だ。それはそのまま君と私の信頼関係にも繋がるだろう? その時、君は私に恩を返す。今度こそ、これならウインウイン。そう、名付けて、ウインウインゲームだ。どうかな?」



……こいつ。いったいどういうつもりだ。

ゲーム性が皆無だが?



「君は私の有益さを理解していないだろう? では、ゲーム開始だ。恩を積み上げていくよ」



ちょっと待て。


だが、シャドウは止める間もなく、更に言葉を続ける。



「まずは、魔法の使い方を教えよう。知りたいだろう?」



な? 魔法、だと!?


いきなり始まるウインウインゲームに、たじろぐ。



「君の推測通り、私は肉体を失ってから、魔法が使えなくなっていた。魔法を使うためには、呪文や魔方陣を言葉や文字にしなくてはならないが、私はそれが出来ないからだと推測している」



や、やはり、か。

だが……。



「では君が魔法を使えるか? 答え、可能性はゼロ、だ」



ちょっと! まてまてまて!


こいつの一方的なトーク。

ウインウインゲーム?

その狙いや裏側を解析すらしていない。

これは完全な後手。


だか、今のところ、こいつの言葉通りの意味しか見えない。

駆け引きの臭いがしない。

わからない。

何を考えている?



「理由を知りたいだろう? 君が魔法を使えない理由を?」



更にシャドウは俺を煽る。

俺が知りたい情報を、目の前にそっと差し出すように。

俺はシャドウを睨む。


ちっ。

魔法を使えない理由、だと?

……知りたいに決まっている。


その根拠は?



「良かったよ。ありがた迷惑な親切ほど厄介なものはないからね。ああ、根拠だね。魔法とは、単純に魔力があれば発動するものではないのだ。魔力というエネルギーが、呪文や魔方陣へ流込み、そこでではじめて、世界の理に干渉する力へと変換される」



俺は、後手とわかりつつ、今はシャドウの言葉に耳を傾けるしかない。


シャドウの目が怪しく光る。



「そう、魔力はエネルギーだ。それを呪文や魔方陣へ流し込む必要がある。その結果が、魔法、だ。魔力=魔法ではない。魔力×魔術だ。魔法を使用するには、術がいるのだ!」



魔術……。



「だか君は、残念ながら、魔力を体外へ放出する器官を体内に持たない。そもそも魔力ゼロだからね。術を使える肉体ではない、のだよ」



なるほど……。


言われてみればそうだ。


確かにここに魔力はあるが、どこにも流し込む手段がない。術がない。


井戸の底に水がたっぷりあっても、ロープも桶もないようなものだ。



「君からすると魔法は理解できない事だろうが、実際は非常に綿密かつ繊細な頑固なルールで成り立っているのだよ。私からのほんのプレゼントなんだが、レベル1から3までの魔術誌に発表されている呪文と魔方陣をSOMBOXに入れておくよ。きっと君は確認したいだろう? 使えるかどうか後で試してみたまえ」



魔術誌が何か分からないが、レベル3までの呪文をくれるだと?



「ふむ、今、SOMへの干渉を、君の思考から許可も得た。魔術誌というのは公になっている魔法をまとめたものだ。ただし、新しい魔法はどんどん開発されているし、オリジナル魔法は秘伝といわれ秘匿されているから、呪文誌は完全ではない」



拘束され、思考の光に繋がれた無力な男に、思わずお礼を言いそうになってしまう俺。


いけない。

こいつは欺きと偽りのシャドウだ。

恩と感じてはならない。



「安心したまえ。君が取引に応じずとも、私は今回に限りどんどん恩を売る。君が応じるまで。それが、ウインウインゲームだからね。さあ、続けようか」



……分からない。シャドウの考えを読めない。


俺に恩を売れば、本当に取引に応じると思っているのか?



「面白い! 君と私の間に見えない天秤がある。どこまでウインを積み上げれば、君の天秤が動くのだろうね」



本気なのか?

悪いがそんな俺は甘くはない。



「さて、続いてだが、Missアリスが君の手を繋ぎどこへ向かおうとしていたか、知りたくないかい?」



ぐっ。

俺は呻く。


またもや喉から手が出る情報!


新人研修か総務的な手続きか、会社に入ると必ずある手順が待っているとは思っていたが、場所が分からないのだ。


食堂に戻るか社員を探して教えてもらうにしても、場所も目的も不明は、おかしいし怪しまれる。


シャドウが知っているのなら、話が早い……。



「正解だ。試験に合格したものは、独立国家マジック・カンパニーの社員であり国民でもある。ただし1ヶ月間は仮入国民扱いだ。よってその間、第9エリアの中央都市付近にある施設で生活する訓練生となる。これは昔も今も変わらないはずだ」



中央都市?



「おっと、これを教えたら、君の思考が、Missアリスを探しだす思考を終了してしまうね。君との楽しい会話が終わってしまう」



こいつ、最後は駆け引きか。



「もう少しだけ、私に時間をくれ。ちゃんと中央都市の名前を教えよう。名前が分かれば後はなんとかなるだろう?」



俺は頷く。

というか、既にシャドウの先程の説明で何とかなるだろう。

中央都市が2つもあるとは思えない。


……こいつ、思っていたより悪い奴ではないのか?



「君は他人と関わるのが嫌いなタイプらしいが、実はそうでもないと私は見ている。例えば、Missアリスの母親の件は?」



アリスの母親?

突然の質問に戸惑いを覚える。



「私なら、Missアリスの母親の病気を治せる可能性がある──としたら、君は喜ぶかい?」



意外な言葉に驚く。



「病名も不明でははっきり言えないが、田舎の未発達な医療では無理でも、私なら治療する術を知っているかもしれない。マジック・カンパニーの工場次長でもあったが、魔法開発部門も統括していた経験もあってね。魔法も薬学にもそれなりに詳しいのだよ。ただ……母親は既に危篤というと、間に合うかどうかは微妙だな」



だから、すぐに取引に応じろと?

思わず生じる怒り。

他人の母親まで取引の材料にするってことか?



「いやいや、だから、君は人を疑いすぎだ! このように束縛されて良い方向と言ったのは、主導権は常に君にあるから、だよ。今は、ウインウインゲーム中。もっとシンプルに考えたまえ。今、私は君に恩を売り続けようとしているだけの、無力な妖精に過ぎないだろう?」



……俺が、おかしいのか?

……俺は、人を疑いすぎるのか?



光の渦の動きが、ゆっくりになっていく。


どうやら、オンリーワンワールド(1人きりのボッチ世界)はそろそろ終わりのようだ。



シャドウ・P・D。

確かにその情報が有益なのは、認めざるを得ない。

この駆け引きは、これからもオンリーワンワールド(一人きりのボッチ世界)が発動する度に、これからも続くのだろうか。



「おっと、残念だが、ウインウインゲームの続きはまた今度だ」



光の渦がおとなしくなるにつれ、その光量も下がり、また思考世界は闇に沈んでいく。


俺は大きく息をつき、闇に染まっていくシャドウの仮面を見つめる。


腕を上げて、拘束された囚人に等しい筈の男から、逆に余裕綽々の態度を感じざるを得ない、

何故だ。

何故この男は、こうも余裕がある。

何故この男は、こうも俺を揺さぶる。


この俺を赤子扱いするシャドウの意図はなんだ?



「最後に、Mr.リョウスケ、私が君に求めている見返り、だが」



ん? もうオンリーワンワールド(1人きりのボッチ世界)は終わりだというのに、なんだ?



「私の願い事。託したい事。依頼したい事。取引したい事。君がどう捉えようと自由だよ」





「それは、ただひとつ、だ。ずっと私のカードを伏せたままなのは失礼だったね」



だんだんと周囲が暗くなる。



「ある者を殺してほしい」



え?



光は、消えた。

闇に融けたシャドウと、仮面。


今、なんて言ったのだ?



「ソイツは私を殺した者だ。マジック・カンパニーに今も潜む連続殺人鬼とも言えよう」



何を言っている? シャドウ?



「ああ、約束を果たそう。君には、嘘はつきたくない。都市の名前は第9エリア中央都市ナインズワーム。君がアリスと会う為に目指す場所の名前だ」



シャドウ!?




暗転……




(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。