試験
「疲れた~!」
拓哉は床に倒れながら背伸びをする。
「お疲れ、どう?進んでる?」
夏野が優しい笑みを浮かべながらお茶を持ってきてくれた。
「おう、まぁまぁかな」
拓哉はお礼ってお茶を受け取ってから答えた。
「じゃあ少しいい?」
「ん?」
「少し外出ない?」
「いいけど・・・」
「ありがと、じゃ、いこっか」
夏野はそういい外に出た。夜とはいえ季節は夏なので、まだ少し暑いそして拓哉もそれを追って外に出た。
そしてそのまま2人はしばらく無言で歩いた。
そしてふと夏野が
「・・・ありがとね」
と拓哉を見ながら言った
「え?何が?」
拓哉は何のことかわからないように首を傾げた。
「あの時助けてくれて。」
「あぁ、いやいやそんな改めて言われると照れるな~、それにあの刀のおかげだって、俺だけだったら絶対やられてたよ」
拓哉は顔を赤くしながら言った。
「だからだよ」
夏野は微笑んだ。
「拓哉って昔から喧嘩とか弱かったでしょ?あの男たちに勝つなんて出来るはずなかったのに・・・それなのに私のことを助けようとしてくれた。あの時本当に怖くて、拓哉が助けようとしてくれた時、とても嬉しかったんだよ?」
夏野は暑いのか顔をほのかに赤くしながら言った。
「え?・・・あ、うん・・・任せろ!」
拓哉は照れて自分でも何言ってるかわからなかった。
「あははっ何それっ」
夏野は一瞬キョトンとして、笑った。
そして
「・・・頑張ってね」
と言った。
「大丈夫、拓哉なら絶対資格取れる。幼馴染の私が保証するよ」
「あ・・・ありがとう」
拓哉は照れて少し俯いた。
「さ!そろそろ帰ろ!」
そういい夏野は拓哉の手を引いた。
絶対に合格してやる。
拓哉は夏野の背中を見ながら心に誓った。
試験当日、3人は試験会場の武闘場にいた。
「ここが実技試験会場か・・・」
周りは殺気立っている。
「ここの人達を倒さないといけないのか・・・」
拓哉の胃が痛くなる。
試験内容は、軽いテストと魔術戦の2つがある。その中でも最も重要なのが魔術戦で、ランダムに選ばれた同じ受験者3人と魔術を使って戦い、勝つことが合格基準である。
「そういえばさっきのテストはどうでしたか?」
「あぁ、まぁなんとかなったよ」
テストの方はもう終わらせて、あとは実技試験だけの拓哉は、少しずつ不安が出てきた。
「・・・けど、俺まだ一度もマナに勝ててないし、大丈夫かな」
そう、拓哉は何十回も勝負を挑んできたが、勝つばかりか攻撃を当てることすらできてないのだ。
「大丈夫ですよ!拓哉さんとても上達してましたし!」
「そうね、ていうかマナを倒せたりしたらおそらく試験官よりも強いぐらいよ」
「マジか、マナ強すぎだろ」
マナと夏野の励ましで、少し心が軽くなった拓哉は、試験官に呼ばれ、フィールドの中に入った。
同じフィールドに、今から戦うと思われる受験生が立っていた。
相手も刀を持っている。
いくら体に安全のために結界が張ってあるとはいえ、喰らったら痛いだろうなぁ・・・
拓哉は少し怖くなった。
「それでは、両者、構え!」
試験官が叫び、拓哉は小刀を構え。相手も刀を構え、精神を統一させている。
「はじめ!」
試験官が叫ぶと同時に相手はこちらへ走ってきた。
「っツ!?」
はや!?
急いで小刀に意識を集中させ、ガードする。しかし
「ハッ!!」
突如拓哉の後ろの地面が砕け、破片が拓哉の方へ襲いかかってくる。
「マジか!?」
拓哉は急いで刀を流し避け、横に緊急回避する。
その時、相手がまるで罠にかかったウサギを見るかのように笑みを浮かべると地面を蹴り拓哉の逃げる先に回り込み、向から刀を振るう。
「クソッ!」
なんとか小刀で防ぐが、衝撃が抑えきれず、吹き飛ぶ。
「いってぇ・・・」
拓哉はそう言うとポケットの中から紙を取り出した。
呪符だ。
マナとの訓練の時、拓哉はどの種類の魔法が使えるか色々試した末わかったのが、拓哉は呪術が得意なのだ。
呪術は、この世界の中で特に珍しく、扱えるものはほとんどいないという。
「くらえ!」
拓哉は呪術を相手に投げつける。すると呪符が炎に変わり、相手に襲いかかる
「呪術だと!?」
相手は予想だにしなかった反撃に反応が遅れ、炎をなんとか防ぐ代わりに体勢を崩す。
いまだ!!
相手が近づかせないように飛ばしてくる岩を呪符により防壁を展開して防ぎながら、拓哉は相手に突進する。
そして
「取った!」
拓哉は二枚呪符を相手に投げつけ、相手の動きを押さえると、小刀を相手に突きつける。
「そこまで!」
試験官が叫び、静止に入る。
「勝者、拓哉!」
試験官が拓哉の勝利を宣言した。
「よっしゃぁぁ!!!」
拓哉はあまりの嬉しさに叫んだ