不思議な剣
次の日、拓也は夏野とマナと一緒に街へ出かけた。
ちなみに、拓哉の今住んでいる家は街から少し離れた村にある。
「うわぁ、街でっかいなぁ」
まるで中世のヨーロッパのような街並み・・・くっそ、確かにイケメンばっかだな・・・」
前に夏野が言った通り、周りはイケメンと美少女ばかりだった。
しかし、マナのような猫耳の美少女はいなかった。
「なんでマナは猫耳があるのに他のひとはないんだ?」
するとマナは少し気まずそうに
「実は、私は少し特殊な一族でして・・・」
「そうなんだ」
マナは何かを隠している気がしたが、気づかないふりをしておいた。おそらく触れてほしくないところなんだろう。
その証拠というようにマナはフードをかぶって猫耳を隠し、周りの視線を気にしているようだ。
「それで、今日は何を買いに来たの?」
夏野はマナに聞いた。
「え、ええと・・・野菜と、肉と、あとは・・・拓哉さんの服ですね」
「服?」
「はい、流石に今の拓哉さんの服は目立ってしまうので、普通の服に」
「ああ、そういうことね」
そうしてまずは服屋に向かった。
「いらっしゃーい、あらぁ、珍しい服着てるわね、誰の新作?」
服屋のお姉さんが話しかけてきた。やはりこの服は目立つらしい。
「ええと・・・じ、自作です」
「自作!?あなたセンスあるよ!デザイナーになったら?」
「あはは、えーと、考えときます・・・」
「それで?どうしたの?」
「えーと、服がほしくて」
「まぁ確かにその服で外を出歩くのは目立つわよね。それで、どれにする?」
「えーと、お任せで」
この世界のファッションというものがわからないので(元の世界のファッションもわからなかったけど)
「お任せね、えーと、あなたに似合うのはこれかしらね」
そう言って3着ほど店員さんは持ってきた。
「んー、どれにしよっかなぁ」
拓哉は選ばれた3着の中でどれがいいか考えた。すると
「じゃあその3つをください」
マナが即座に購入を決めた。
「え?全部ですか?」
「はい、1着だけじゃ洗濯をした時に替わりに来てもらうものがないので」
「なるほどね。」
「あと、私も少し服を見ていきたいので、その間商店街を見ていってください。道案内は夏野さんに頼んでください」
「わかった」
「じゃあ拓哉、行くわよ」
そう言って夏のは拓哉の手を掴んで歩き出した。
「なっ夏野・・・!?」
「・・・なに?」
夏野は顔を赤くしながらもぶっきらぼうに答える
「あの、て、手が」
「繋いどかないと迷子になるでしょ?文句ある?」
「いっいえ・・・」
そのまま2人は商店街を回ることにした
夏野と一緒に街を周っている拓哉は、正直あまり店に集中出来ていなかった。
なぜなら手を繋いでいるのである。しかも初恋の相手、そして今でも好きな人に。
「・・・ねぇ聞いてるの?」
混乱している拓哉に夏野は不審そうに声をかける。
「え!?ご、ごめん聞いてなかった。なに?」
「もう昼だしご飯食べる?って聞いてるの!」
「いいね、あっでもマナを連れてこないと」
「マナが2人で食べてって言ってお金渡してくれたの。どこがいい?」
「どこがいいって言われてもわかんないし・・・夏野に任せるよ」
「わかった、じゃあオススメの店を教えてあげる!」
そう言って夏野は拓哉の手を引っ張る。
そして店に入り、夏野のお勧めメニューを頼む。
「ここのお店すっごい美味しいのよ!」
と夏野は笑顔で言った。それは楽しみだ。
そして運ばれてきたのは
またもやでっかい虫だった。
しかも今回のはあのカサカサ動く黒光りした軍曹さんが巨大化したような見た目だった。しかも今回は焼いてるのではなく蒸している
「・・・これはさすがにきつい」
拓哉は思わず叫びそうになるのを堪えて呟いた。
夏野を見ると夏野はでっかい軍曹の脚をちぎって皮をむいて身を食べている。顔はすごく幸せそうだ。
好きな幼馴染がでっかい軍曹を食べてる・・・
拓哉はなんか悲しい気分になった。
「どうしたの拓哉、見た目はアレだけど美味しいわよ?カニみたいで」
3年という月日が夏野をここまで変えてしまった。
「お、おう・・・いただきま~す・・・」
そして脚をちぎり、身を出して一口食べる。
「美味い・・・」
やっぱり美味しいのだ。美味しいのはわかってた。昨日も虫が美味しかったし。でも見た目が辛いのだ。
「でしょ?このゴキ虫美味しいのよ!」
「ゲホッグフォ!」
名前もモロアレでむせてしまった。
そして食事が終わり、店を出て、またいろんな所を周った
怪しげ店で魔力が込められたという小刀を買ったり、大道芸を見たりした。
夏野はその間ずっと笑顔だった。
そして日も暮れ、そろそろマナの所に戻ることになった。
「楽しかっわね!」
「そうだね、また来たいね。」
話しながらマナの所に向かった2人の前に
「ちょっと待てガキ」
ガタイのいい大男が2人、道を塞ぐように立ちはだかった。
「殺されたくなかったらその女をよこしな」
「え?」
「きっとこいつはいい金になるぜ、よこしな」
そう言うと1人の男が夏野を押さえた。
「なっ!離せ!」
拓哉は大男にしがみ付いた。
しかし
「うるせぇクソガキ!」
男が拓哉の腹を蹴り、拓哉は吹き飛ばされた。
「拓哉!」
夏野は悲鳴をあげる。
「お前も黙れ!」
「夏野!」
そう言ってもう1人の男は夏野の腹を蹴る。
「おいおい、女には手を出すなって、売り物にならなくなるだろ?」
「安心しろ、そんなに強くは蹴ってない」
「夏野を離せ・・・」
拓哉は必死に体を起こした。
「あ?殺されてえのか?」
「離せ・・・!!」
拓哉は蹴られた時にポケットから出た、怪しげな店で買った小刀を手に、叫びながら突進した。
「死ね!ガキ!」
男は腰に付けた剣を抜き、振りかぶった。
しかし拓哉は小刀で剣を受け流し、懐に潜り込み、首を峰打ちした。
「なっ!?この!!」
もう1人の男が夏野を離して剣を抜き拓哉に襲いかかった。
しかし、拓哉は剣を最低限の動きで躱し、相手の剣を奪い、相手の足に刺した
「グアァァァ!!!」
男は叫びながらその場でうずくまった。その隙に拓哉は相手の頭に回し蹴りをして、男は気を失った。
「夏野!逃げるぞ!」
そう言って拓哉は夏野の手を掴み、走り出した。
「あ、ありがとう・・・助けてくれて」
夏野は顔を赤くしてお礼を言った
「う、うん」
「でもどうやったの?拓哉確か喧嘩は弱かったでしょ?」
「それがわかんないんだよ・・・小刀を手に取ったら力が湧いてきて、気付いたら体が動いてたんだ」
「そ、そうなの?」
拓哉が怪しい店で買った刀が、ある力を持ってることをまだ拓哉と夏野はまだ知らなかった。