デート
拓哉は窓から外を見て呟く
「暇ねー」
夏野も拓哉の隣で外を眺めながらつぶやく
「夏野、しりとりしようぜ」
「いいわね」
「俺結構強いんだぜ」
「私もなかなかなもんよ」
「いったな?じゃあ俺から、しりとりの『り』からで・・・・リス」
「#雷剣__スパークブレイド__#」
「・・は?」
「魔法の名前よ」
「お、おう・・・ど、ドイツ」
「#誘導銃__ツールレート__#」
「はいやめークソゲー!!」
拓哉は強制的にしりとりを終了させた。そりゃあ魔法の名前なんて出されたら埒が明かない
「じゃあ何する?」
「なにもしなくていいんじゃないかしら、こうしてのんびりするのもいいんじゃない?」
「それもそうだな」
「あら?お二人とも今時間があるんですか?ちょうどよかったです!家の掃除を手つだ・・・」
「ねえ拓哉!外行かない?」
「いいな外!やべえ!俺今めっちゃ外行きたい!」
「マナ!私たち今から少し出かけてくるわ!」
「そ、そうですか(´・ω・`)」
「「じゃあ行ってきまーす!」」
二人はわざとらしすぎる笑顔を浮かべながら外に出た。
「あ、危なかった・・・」
「そうね・・・もう少しで掃除させられるところだったわ」
二人が掃除を嫌っているのには理由がある。もちろんめんどくさいからという理由ではない。
少し前、部屋の掃除を頼まれたとき、何も知らない拓哉は快く手伝った(夏野は前に経験したから逃げた)のだが、掃除の仕方が凄いのだ、まず、塵蜘蛛というゴミを食べてくれる蜘蛛一部屋につき60匹放す。(一匹約30ミリほど)そしてその蜘蛛による掃除が終わると、今度はそのクモを追い出すために蜘蛛蜥蜴を放す。トカゲは蜘蛛を全て食べたら勝手に出ていく。拓哉が手伝ったのは、塵蜘蛛をいろんな部屋に放す作業である。一度かごを開くと、大量の蜘蛛が溢れだしてきて、虫嫌いでなくても体調が悪くなる。
「これからどうする?あの掃除が終わるのに5時間はかかるわよ」
夏野は拓哉に並んで歩きながら尋ねる
「うーんどうしようか、どこか行きたいところとかある?」
「うーん、じゃあ、あそこに行きたい」
マナが指さしたのは、壁に貼られたポスターだ。ポスターには大道芸コンテストと書いてある。
どうやら大道芸人を集めて、一斉にショーをやるようだ。
「じゃあそこにするか!」
そして15分ほど歩き、二人は会場の広場に着いた。
そこでは、玉乗りをする人、手品をする人、ジャグリングをする人、観客を巻き込んだ芸をする人など、多くの芸人が集まっていたり、多くの出店も出ていてすごく盛り上がっていた。夏野も興奮し、あれみたいこれ見たいあれ食べたいこれ買いたいとはしゃぎまわっていた。
拓哉もそんな夏野につられて自然と笑顔になった。
「はー楽しかった!」
夏野は満足したように笑顔になる。
もう暗くなっていて、今は帰る途中だ。
「あのジャグリングの人すごかったわね!ナイフを10本も使ってジャグリングして!」
「ああ!あれはハラハラしたよ!」
二人が笑顔で感想を言い合っていたらあっという間に家についた。
「ただいまー!」
「お帰りなさい、どうでした?大道芸は」
二人が家に帰るとマナが笑顔で迎えてくれた。
「え?なんで知ってるの?」
「夏野さんが首にかけているペンダントを見ればわかりますよ、それ、大道芸コンテストの限定ものですもの。」
「ああ、だからあんなに欲しがってたのか」
夏野がかけているのは星の形のペンダントだ。
屋台の射的の商品で、拓哉が頼まれて、2000セント(一回100セント)使って取ったのだ。何度もやめていいかと聞いても絶対に取ってと頼まれたものだ。
「・・・それだけが理由じゃないもん」
夏野が小声でつぶやく。
「ん?何?」
聞き取れなかった拓哉が夏野に聞く
「何でもないわよ!」
夏野は顔を赤くした。
そしてその後ご飯を食べ、夏野は寝るためにベットに寝転がる。そして今日一日風呂に入るとき以外は身に着けていたペンダントを外した。そして夏野はペンダントを眺め、頬を緩めた後、ベットの隣の棚に大切そうに置いて、眠りにつく。
夏野のペンダントには、ガラスでできた星の中に魔法で枯れないようにして、さらに小さくした花びらが一つ入っていた。
花の名前はキキョウ
花言葉は 変わらぬ愛