地獄終了のお知らせ
「殻を・・・剥く?」
「はい!お願いします!」
マナは笑顔で言いながら、拓哉がぶつ切りにしたゴキ虫を持って皮を剥いでいる。なんか怖い。
拓哉の目の前に置かれたのは、まだ少し足がうぞうぞ動いているでっかいダンゴムシみたいな貝だった。貝と言ってもホタテとかの貝ではなく、虫である。ダンゴムシをそのままでっかくした虫である。
「安心してください!汁は飛び散りませんので!」
「そ、そっか・・・へー・・・」
汁が飛び出そうが飛び出さなかろうが気持ち悪いことには変わり無いんだよなぁ
拓哉はゆっくりとダンゴ貝を鷲掴みする。そして頭の部分にある、殻と身の隙間に手を伸ばし、一気に引き裂く
「・・・うわぁ」
拓哉が目にしたのは、ダンゴ貝の背中にびっしりとついた内臓である。まだ少し動いている。見た目は、サザエをくりぬいたときに見える内臓がでかくなった感じだ。
しかも少しどろっとしていて、内臓が拓哉の手にまで垂れてきた
「ヒェッ!!」
拓哉はボウルにダンゴ貝を叩きつける
「で、でっ?この後は?」
拓哉は手を一生懸命ゴシゴシと洗いながらたずねる。
「まずダンゴ貝の内臓と身を分けてください。そのあと、内臓をすりつぶしてソースを作ります」
「・・・それは俺がやるのか?」
「当たり前ですよ!」
「うへぇ・・・」
マナは忙しそうにゴキ虫の足をもいでいる。足をもぐたびに緑色の体液が飛び散るのだが、気にせずもいでいる。
負けてらいられるか!
拓哉はダンゴ貝の内臓を掴み、もう1つのボウルに移動させる。そして棒を使って内臓をかき混ぜる。ブチュブチュと音を立てて内臓はだんだん液状になる。
「・・・なんか黒魔術にでも使いそうな感じだな」
拓哉はポツリとつぶやいた。
そしてすりつぶした内臓に塩、お酒、そして生クリームを入れた
「・・・そういやマナ、俺は何を作ってるんだ?」
拓哉はマナの言われた通りに動いていたが、何を作るかはしらない。
「あぁ、クリームシチューですよ」
「クリームシチュー?」
変な材料を散々見たあとで、まともな料理名を聞いた拓哉は思わず聞き返した。
「はい、夏野さんの大好物なんです!」
「そ、そうか」
まともでよかった・・・
拓哉は思わずホッとした
「よっしゃぁ!完成!」
拓哉はバンザイをする。
目の前にはサラダ、ゴキ虫の身がたっぷり入ったクリームシチュー、パンがある。
ちょうどその時、夏野が起きて来た。
「ちょうど良かったです!夏野さん!ご飯ですよ!」
「うわっ!すごいご馳走じゃん!これゴキ虫でしょ?」
「はい!今日は拓哉さんの免許獲得のお祝いです!」
「へぇ~美味しそう」
ちなみにゴキ虫は高級食材で、扱いで言うとフカヒレみたいなものだ
「そして何と!拓哉さんも手伝ってくれたんですよ!」
「拓哉が?」
「夏野への感謝の気持ちを込めてね、もちろんマナも」
拓哉が少し照れながら言う。
「ありがと・・・」
夏野が顔を赤くする。
「それじゃあ食べましょう!」
「「「いただきまーす!」」」
「うわっめっちゃ美味い!」
「うんおいしい!」
「おいしいですね!」
やはり絶品だった。
なんか自分で作ったらさらに美味しく感じるな・・・
拓哉は食べながら思った。しかし
でももうやりたくないな・・
もはやトラウマになっていた。