表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷の館  作者: 辰野ぱふ
6/26

暗い部屋 (2)

 だが、次の日になると、マシシはケロリとして、マシウスを誘いに来た。

「どう? 日にちが変わると気分も変わった?」

 そう言っておもしろがっているように見えて、今度はマシウスの腹が立って来た。

「だから、放っておいてくれ!」

 とマシウスはいらいらして、マシシをどなった。

「はいはい。そうやってどなれるじゃないか! コーネリア様のことを思えよ! もうコーネリア様は怒鳴ることもできない。動くこともできない、泣くことも笑うこともないんだ。それができるっていうのに、君はしないつもりなのか?」

 今度こそ、マシシは怒ったのだろうか? でも、やっぱり次の日になると、マシシはケロリとして、マシウスの部屋にやってきた。

「もう、いいかげん、行こう。ソリなんて乗ればいいだけのことだ!」

 マシウスはなんだか、もう、マシシに何か言う気になれなかった。

「ほらほら。もう、いいだろう! も300日も数えたんだから!」

 マシシは怒っているのだろうか? マシウスはふと不思議に思って、マシシに聞いた。

「怒ったの?」

「ま、怒ったかもね。でも、怒っても次の瞬間には冷めちゃう。だって、怒っていてもつまらないからね。わしはもう、たくさんたくさん怒られてきたんだ。怒るってのは、すごくつまらないことさ」

「ふうん」

「じゃ、行く?」

 とマシシに言われて、マシウスは思い切って、ソリに乗ってみようと思った。


 ソリの中は、まるであの日と同じようだった。

「あの日と同じと思っている?」

 とマシシが聞いた。

「あのね、今日は違う日だし、このソリは同じ形だけど、違うソリなんだ。あの日と似ていたとしても、同じことが同じように起ることはないよ。違う日なんだからね。あの日のソリは壊れてしまった。それはもう戻らないんだ」

 なんだかんだと言葉をつなぐマシシのことがだんだんおかしくなってきた。

 ソリに乗ってみると、怖かった。この怖い気持ちを思い出したくなかったのかな? とマシウスは思った。でも、走り出してみると、あの日以外の日のことも、すべるように思い出してきた。悲しいことが起るなんて、想像だにしなかった楽しい日々のことだ。

 もう、夕暮れになっていた。ソリの窓から、うっすら暗いスーメルクの街が見えた。歩いている人はほとんどいない。家からは明かりがもれていて、湯気があがっている。皆、家の中で家族と暖かい時間を過ごしているのだろう。

「今日はサルクネリのパブに行くよ。楽しいってことを思い出すためにね」

 とマシシが言った。

 もし、今、ソリがまたすべり落ちたとしても、いいんじゃないか? とマシウスは思った。それならそれでいい。

 部屋に閉じこもっていた時がうそのように思えたし、なんで閉じこもっていたのかも、もう思い出せなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ