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前奏曲は静やかに紡がれる  作者: くろごま
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プロローグ:いざゆかん、異世界へ!



 人は二次元という単語を聞いて何を想像するだろうか。

 一般的にリアルが充実した方々は、大したことを思い浮かべないだろう。しかしモニターの向こう側へ思いを馳せる系の人間にとっては甘美な楽園に聞こえる。色とりどりの髪や瞳の美少女、魔法と言う非凡な概念、未知のエネルギー、謎の生命体。有り得ないものに憧れるのは、誰とて起こり得る現象だ。主に中学生前後から、長い人は死ぬまで思いを馳せ続ける。かくいう自分―兎冬うとう なぎもその一人だ。いや、自分は夢見がちな年頃であって、死ぬ寸前だとかそんな重い設定は全く以て無いけれど。


 発光するモニターを横目に、平凡な出で立ちをした人間は淡い期待を、自室の床へと描く。薄暗い室内に灯りと呼ぶべきものは特に見当たらない。天井に吊るされた洒落た電灯は、意図的に使用されていない。当人曰く期待と希望が込められた床には、砂や赤色の塗料と思しきもので、何やら円と文字が描かれている。所謂、魔法陣というものだ。丁寧に、慎重に床へ向かって希望を描く張本人は、至って真面目にやっている。中学二年生辺りで起きる一種の病気とはいえ、ここまで真面目に取り組む者がいるだろうか。友人間で実しやかに囁かれているフラワーガーデン(頭)の名は伊達ではない。


 「よーし完成、完成っと。」


 学生服を着用した人物は、中腰の体勢で満足気に呟いた。因みに独り言である。もっと言うと魔法陣(仮)も、ネットの海から拾い上げてきた産物を模写しただけである。学生服の浮かれあんぽんたんは、無駄に手入れの行き届いた黒髪を耳にかけて、モニターに目線を映した。怪しげなホームページの記述によると、本来ならば赤い塗料ではなく動物の血液を使用しなければいけないが、平凡な学生にそんなものは用意できない。中央に盛った砂も、庭から拝借してきた何の変哲も無い、ごく普通の砂だ。三本の金属片は家の中には見当たらなかったので、百円均一で買ってきたワイヤーが代用品として鎮座している。何とも不格好な魔法陣(仮)だ。


 「後は呪文の詠唱か。気合入れにゃなー。」


 得意げな表情で大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。まるで一世一代の告白でも行うのではないかと思うほど意気込んでいるが、今から行われるのはありふれた遊戯に過ぎない。有りがちなシチュエーションに夢を見て、昨今のラノベ的展開に燃え滾った、哀れな邪気眼属性持ちの中学生が執り行う浮かれた儀式なのだ。異世界、もといモニターの向こう側へ行く事を切に願っているが、苦節の人生を送っている訳ではない。順風満帆な家庭に産まれ、平凡な日常を甘受し、非凡を夢想しているだけだ。


 「えーっと…」


 「針は幾年を指すか(ヴェルザンディ) 砂は幾年を巡るか(スクルド) 血は幾年を求むか(ウルド) 汝は星霜を跳躍す(ラーグ) 汝は流れを停止す(イス) 汝は法則を破棄す(ウル) 代償は変わりなき変化(ダェド) 奇蹟は限りなき寵愛(エオロー) そして不変は最大の懲罰(ニード) 狭間を渉り、我が手へ来たれ。」


 緊張で声を震わせ詠唱を行うと、眩い光が魔法陣から放たれる。突然の光輝に目を瞑り、ゆっくりと双眸を開くとそこは見た事も無い土地だった。…なんて王道展開はなく、ぎゅっと閉じた瞳を開けば、何ら変わらない自室。塗料で描かれた派手な円は微動だにしない。現実は非情である。いや、突然動き始めてもそれはそれで気味が悪いのだが。流行の異世界系ハーレム主人公への道は呆気なく閉ざされた。淡い希望が粉々になった事実を、頭の片隅で納得し、どこか安堵している自分に多少の嫌気を持つ。


 「まあ、そう簡単に異世界にトリップできりゃ苦労はしないよねー。」


 知ってた、と期待を胸に掲げていた艶やかな黒髪は悄然と項垂れた。所詮は浮かれた中学生の戯言であり、遊戯で終わったのだ。兎冬凪はそそくさと床に描かれた魔法陣へと手を伸ばした。後片付けにも手順が存在し、蔑ろにすれば何が起こるかも知らずに白い腕は乱雑に床を清掃する。赤い塗料は血の色に似て、酷く不気味だ。部屋の薄暗さが一層、雰囲気を引き立てている。幾ら脳内に常時お花畑が形成されているとはいえ、客観的に自分を見ることくらいは出来る。夢を馳せ希望を描いていた数分前とは打って変わり、随分と滑稽で哀れな姿だと思った。

 数分前も現状と何ら変わりなく滑稽である事実には、見て見ぬふりをした。その程度兎冬凪にとっては朝飯前なのだ。姉妹間で実しやかに囁かれているフラワーガーデン(脳)の名は伊達ではない。


 せっせと床を雑巾で磨く傍らで、命と金とご飯の次程度に大事なパソコンのモニターは、不規則な明滅を繰り替えしている。


 「手順というのは守る為にあるのですよ。」


 「…?」


 赤い塗料が目に見えて薄くなった所で、兎冬凪の耳に幻聴が届いた。まるで声優さんのような声が、突如として室内に響いたのだ。幻聴だと思わざるを得ないだろう。もしくは自分が開いていた『異世界トリップなんて簡単ですよ』を謳い文句としたページは悪質サイトだったのか。咄嗟にモニターへと視線を移すと、何やら新しい文章が追加されている以外に変わった点は見当たらない。


 『Successus!』


 日本人にも易しく書いてほしい。残念なことに光と闇とか、魔法っぽい英単語程度は趣味で覚えてあるが、それ以外はからっきしである。日本語でよろしくおねがいしますと、情けない懇願を頭の片隅に浮かべ、同時に疑問が浮上しはじめる。追記された文章以外は、慣れ親しんだ母国語で記述されているのだ。これはもしや馬鹿にされているのではないかと、筋違いな怒りで眉間に皺を寄せた。日本国内で生きる上で、それほど英語は必要なかろう。グローバル化が進む現代において致命的である事には気付かない辺りが子供である。


 「コピーのー、エキサイツ翻訳さんこんにちは。さっそく翻訳してくりゃれ。」


 素早い動作で翻訳サイトへと飛ぶと、コピーした内容を貼り付け、翻訳ボタンを押した。


 『Successus→Successus』


 「変わらないじゃねーか。仕事しろ」


 恨めしい独り言を吐いた所で、何が変わる訳でもない。片手のマウスは堅実に、思考通りの動作を行っただけなのだ。せめて斜め上の翻訳結果を寄越してくれれば、笑い飛ばせたと言うのに。文句を並べつつ、御用達のかっこいい英単語一覧サイトに飛ぶ辺り、欲望に忠実である。だって気になるじゃん。


 ポチポチと単調な機械音を室内に響かせ、背を丸めモニターとにらめっこを続ける様は、兎冬凪におけるいつもの情景だ。背後の薄くなってしまった紅い塗料と土、ワイヤーで象られた謎の円形が十分に片されていない現状は、傍から見れば異質な空間極まれりといったところだろう。異質と言うより惨状といった方が適当であるやもしれない。薄まった塗料は未だしも、土とワイヤーが放置されているのが滑稽さを表現している。しかし、にらめっこに夢中な黒髪の少女は中二病御用達の単語一覧サイトに目を凝らしては、見つからず、また別のサイトへとアクセスしては、見つからず。不毛な時間を繰り返しているうちに、背後の惨状を完全に忘却の彼方へと押しやってしまっていた。


 そうして無為な時間を浪費している内に、英語よりも太古の言語にまつわるサイトへと、無意識に移動していた。まるで誘導されているかのように、意識せずにお気に入り一覧を開き、サイトを選択する。英語も碌に理解できない人間が、かっこいいからといって手を出すのは憚られた言語を取り扱うサイトだった。程なく画面が移り変わり、大量の文字列が浮かび上がる。

 こういったサイトは、他者が理解しやすいよう、見やすいよう配置することでアクセス数を稼ぐものだ、とは彼女の自論だ。そもそも辞書の役割であるから、見易さは重視されずとも良いのだろうが、何せ彼女は然程頭が良くない。こうして文字を無尽蔵に並べられては、頭痛がしてくるばかりだ。色と文字の大きさを変化させ、解り易く配慮されたものを好むあたり、まだまだ子供である。


 瞳を細めて眉間に皺を寄せながら、ページをスクロールしていく。マウスのホイール音がやけにうるさく感じた。そうして、兎冬凪は念願の解答に辿り着く。


 『Successus:成功』


 「せい…こう?」


 望みに望んだ答えを復唱、言葉の意味を理解し、大きく溜息を吐いた。

 

 「かんっっぜんに!!馬鹿に!!された!!!」


 学生服の少女は大声と共に机を打ち付け、リクライニングが効き過ぎている愛用のチェアの背もたれへと沈んだ。机を叩いた掌がじんじんと痛む感覚を無視して、ぐっと握りしめると、行き場の無い怒りをどこにぶつけようかと目を閉じる。思考の末に、自業自得という言葉が浮かんできて、怒りよりも情けなさを覚えた。自分は何をしているのだろうか。儚い夢どころではない。花畑一直線の脳内で、ゴングの音が聞こえた気がした。勿論、敗者は己である。


 もう一度溜息を吐きだして、愚かな自分を自覚し、目を開いた。大人の階段を全速力で上りきった気分である。


 「ふむ、魔力容量も、貯蓄量も悪くはないですが、どうやら頭は悪いようで。馬鹿と天才は紙一重と言いますしね。」


 視線の先には、いつもと変わらぬ天井がある。クリーム色の天井。自分だけの小さな箱庭せかい。染み一つ無いクリーム色の天井に、見知らぬ人間の顔が存在していることを除けば。


 「おや、望みを叶えてさしあげたというのに、随分と浮かない顔をされている。ご不満がおありで?我が下僕様あるじさま


 部屋の清掃に精進していた際に聞こえた幻聴と同一の声色だと気付くのに、たっぷり五分。眼前の侵入者の言葉を理解するのにたっぷり十分。侵入経路を解析するも、理解が及ばず思考停止。いわば、現在の浮かれあんぽんたんこと、兎冬凪はパニック状態だった。それもそのはずだろう。痛いサイトで痛い術を行使し、痛い呪文を唱えて、一人でぷんすかしていた後に、漸く平静を取り戻し、天井を見上げた所に異常に端整な顔立ちの見知らぬ侵入者。しかも言葉使いは丁寧だというのに、内容は自分を馬鹿にしている。この状況下でパニックを起こさない人間は精神的に卓越されすぎている。というか最早人間じゃない。


 「そう慌てられると困ってしまいますねぇ、愉しくて。」


 黄金色の瞳をすっと細めて口角を上げる様は、誰が見ても見惚れる程に美しい。どこからか溢れ出るドSオーラ、基鬼畜オーラが無ければ尚良し。ああ、でも需要はありそうだな。我々の業界ではご褒美ですってモニターの此方側民は喜びそう。しかしドМに限るけど。因みに私はドМじゃないから勘弁してください。チェンジで。見事なまでのアホ面で硬直しながら、兎冬凪の脳内ではそんな事が考えられていた。口には出していない。出したら何が起こるかわからないからである。臆病?言いたければ言うがよい。


 「これは手厳しい。幼女形態の方が宜しかったでしょうか?もしくは近所の優しいお姉さん?どちらにせよ、本質までは変化できませんが。」


 「…あ…いや、…だ、誰…っていうか、どうやって…」


 ようやっと絞り出された兎冬凪の声は、今にも消え入りそうだった。むしろ彼女としては己の声が出た事に驚きである。見上げた姿勢を十数分続けたことで首が悲鳴を上げ始めたので、とりあえず顔を正面へ向けてゆっくりと椅子から降り、振り返った。

 現実味はないが、幽霊かもしれない。しかもとんでもなく美少女で、鬼畜オーラの漂う幽霊かもしれない。呪いとか振り撒く系か。光魔法、かっこいいポーズ!とかやったらどっかいかないかな。馬鹿馬鹿しい思考を繰り広げながら、椅子の後ろから覗き込んでいたモノの全体像へと目を凝らした。しかし暗くて良く見えない。


 モニターの光を頼りに正体不明の侵入者、もしくは幽霊をよく見る。

 大きな黄金色の瞳、白っぽいような紫がかっているようなふわふわの長髪。背丈は自分が愛用チェアよりも、頭一つ分大きい。まるで日々モニター越しに見る二次元の偶像のようだ。モニターから出て来たと言われても、疑わない、いや疑いようのないほど整った顔立ちと、三次元に生きる人間には再現できないカラーの少女。コスプレイヤーにしては、現実性が有り過ぎていて、幽霊と呼ぶには実体を伴い過ぎている。フラワーガーデン(脳)の名は伊達ではないとかいったが、此処までがっつり幻覚が見えるとは。我が脳ながら天晴と言うべきか、憐れと言うべきか、賛辞に悩む。


 「前者には、何者でもないと答えておきます。後者は、少し頭を捻れば理解できるのでは?物理的に捻ってさしあげましょうか?」

 

 清々しいほどにこやかに微笑みながらにじり寄ってくる端整な幻覚は、恐怖の対象でしかない。笑顔から胡散臭さと鬼畜臭が溢れんばかりに放出されているのは、自分が心底でこういった欲求を持て余していたからなのだろうか。いやいや、私ドМじゃねぇよ。


 「遠慮させてもらいます。」


 即答して半歩後方へ下がった。うん。怖いもん。自分が生み出した幻覚だというならばもう少し優しくてもいいのではないだろうか。そもそも私は幼馴染系ヒロインが好きなのだ。こんなハードな性格のヒロインは求めていない。確かにハーレム物なら一人くらいはいても構わないと思うけれど、一人目の攻略対象が丁寧口調なドS?…何せ胡散臭い、そして恐怖心を与えてくるヒロインとか絶望しか見えない。ほのぼのファンタジー異世界トリップを夢見る中学生の元に現れていいものじゃない。


 残念思考を繰り広げるうちに、疑問が浮上する。そもそも自分は異世界トリップを夢見てサイトの記述通り実行した。魔法陣とも呼べない不格好な円形をせっせと作り、指示通り呪文っぽいものを詠唱。しかしなにもおこらない、を体験して憤った筈だ。その後すぐに、現在眼前で微笑みを浮かべている鬼畜系ヒロインの声が聞こえた。ついでに怪しげなサイトに成功との言葉が追加されていた。とどのつまり、これは…。


 「どういうことだってばよ…」


 どこぞの某有名忍者漫画の主人公を彷彿とさせる台詞を、無意識に口から垂れ流しながら兎冬凪は脱力した。愉快な見世物を視るような、もしくは何度教えても簡単な問題を解けない前途多難な学生を蔑むような視線が突き刺さった。何重の意味でも辛い。


 「やはりここは一度、物理的に頭を捻ってみるのが適切やもしれませんね。心苦しいですが私が、行ってさしあげましょう。」


 「心苦しいって一つも思ってない顔しながら寄ってこないで!?」


 幻覚様は実に愉しそうな顔でさらりと嘘を吐き、自分へと近付いてくる。待て待て、怖い。ただただ怖い。ヤンデレ系ヒロインとかもそこそこいける口だったが、現実に存在すると恐怖でしかない。あれ、これさっきも私似たような事思ってた気がする。パニックの窮地から悟りを開いてしまいそうだ。幻覚恐怖症とか、美少女恐怖症とかに陥る寸前である。そもそも現状は現実ではないのじゃないか。そうだ、きっとこれは夢だ。夢オチに違いない。主人公がヒロインによって窮地に立たされるとか有り得ないもの。

 

 「夢だと思うのならば一度私に首を捻られてもいいのでは。」


 「やめてください、しんでしまいます。」


 夢オチであることを望んではいるものの、この状況を夢だと思えない確固たる痛覚が掌に残留していた。先程怒りにまかせて机を叩かなければよかった。着々と精神と脳が疲弊し、少しばかり睡魔が襲ってくる。こんな状況下でも眠気を伴うのは、現在時刻のせいだろうか、それとも己はそれほどまでに図太い精神を持っていたのだろうか。あっ、後者な気がする。


 「図太い精神をお持ちの我が下僕様あるじさま、宵も酣、そろそろ就寝されてはいかがですか?」


 この状況下で睡魔に苛まれる己の図太さは確かに認めよう。だが、こんな怪しい幻覚を放置して就寝できるものか。いくら脳内を満開の花畑で形成していようと、流石に危機感はある。何が起こるかわからない、いや、何が起こっているのかわからない現状について、満足のいく解答はまだ得られていない。別に寝るのが怖いとか、そんなんじゃないよ、断じて。

 

 「あなたは、誰なの…。今ここで寝るのはある意味死と同義だと思ってるんだけど…」


 「無駄な殺生はいたしませんよ。」


 煌びやかな黄金の瞳が明滅しているような錯覚を覚えた。口元は微笑を絶やさないというのに、瞳の奥は全く以て笑っていない。目で人を殺すとは、こういったモノを指すのではないか。整った唇から吐き出される声色とは裏腹に、彼女の瞳はいいから早く寝ろと強く訴えてくる。笑顔とは、他者に畏怖を与えるものだったのか。


 「微笑みで人を殺せたら凄いですよねぇ。」


 「あれ、今私殺意を抱かれてたの?!」


 「どうでしょう。ああ、そういえば、自己紹介がまだでした。」


 別の意味を含んでいそうな笑みを浮かべて、眼前の幻覚殿は自分より幾何か小さく、白い掌を差し出した。さらさらと、彼女の天然物の白髪が揺れる。彼女が己の名を唱えてしまえば、何となく、後戻りはできないような気がした。


 「まつり 千撫せんなと申します。今後ともよろしくお願いいたしますね、我が下僕様あるじさま。」


 「絶対日本人じゃないよね。」


 祀千撫と名乗った少女の語尾にハートマークが見えた。気さくさとはかけ離れた微笑には、愉快極まりないとの感情が滲んでいる。笑顔で人を殺せる類いの人だ、と兎冬凪は頭の隅で恐怖を覚えた。


 兎冬凪にとって命と金とご飯と命の次に大事なモニターは、先程まで開いていた筈のページを閉じ、異世界へと誘う怪しげなサイトを開いている。魔法陣の参考画像や、彼女が唱えた呪文はまるで最初から記載されていなかったか如く消え失せ、大小色とりどりの『Salutatio!』の文字で埋め尽くされていた。大小の文字に埋め尽くされる形で『ようこそ、異世界へ』の文章が紛れている事を、好奇心旺盛な中学生は知らない。




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