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錆びる

 赤錆の人型がぞわぞわと揺らぐように動き出した。瞬間、風穴から聞こえた泣き声に似た風の音が聞こえてきた。あれはおにいちゃんなのか、おじいさんなのかはわからないけど、僕はずっとここへ呼ばれていたことを確信した。

 僕はここの秘密基地でおにいちゃんと一緒に冒険にでるんだ。


 あのね、おにいちゃん、冬あたりからかな? おにいちゃんのおじいさんと僕も夢で何度も会っていたんだよ。おにいちゃんの夢では男の人だったみたいだけど、僕の夢では白い髪のおじいさんだった。

 おじいさんは海の底で淋しかったんだろうね。それで釣り人を呼んだのかもしれない。

 そしておにいちゃんが灯台で一人になることも知ってたんだ。灯台へ行ってやっておくれ、一人は淋しいからなって毎晩夢で言われ続けた。僕がはじめて灯台に来たあの日、声だけだったけど怖くなかったのはそのせいだ。なぜおにいちゃんがここで朽ちたのかは知らない。だけど僕が呼ばれた理由わけは理解できた。おにいちゃんは冒険者で僕も一緒にその世界に行かなくちゃいけなかったんだ。


 赤い塊から紐状の赤い錆が何本も伸びて僕の手足に絡みつきだした。錆が潮くさい皮膚に反応しているんだろう。やがて錆が細胞のひとつひとつに浸み込みはじめたので、僕はおにいちゃんと同じように両足を抱えてしゃがんだ。

 波の音が聞こえてくる。それが僕の心音と重なりだして心地よいフレーズに変わっていく。まるで冒険者を讃える歓声が唱和されていくような感じがするね。


 ゆっくりとだけれど、錆びだした細胞が身体の臓器を徐々に赤く染めていき――僕は赤錆びの塊になった。


 おわり

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