僕だって
春休みが終わり少しずつ暖かくなってきた頃から、僕の〈ほし〉拾いがはじまった。今年は風の通り穴でたくさん拾えて有頂天になっている。きっとおにいちゃんのお祈りが神様に通じたからかもしれない。だから僕は灯台の階段を〈ほし〉で埋め尽くすことにした。
朝夕の防波堤にはたまに人影がみえるけど、灯台にはだれも行かない。だれにも見つからなければ叱られない。こっそりなら見つかることもなさそうだった。
僕は〈ほし〉を錆びた階段に敷き詰めている。手をついても錆で汚れないように上の部屋へ近づいていく計画だ。もうすぐ一番大きくてきれいな〈ほし〉をおにいちゃんの秘密基地に置けそうだ。今の僕は冒険者の気分なんだ。
僕は隙間が出来ないようにびっしりならべた〈ほし〉にペットボトルから海水を毎日かけた。〈ほし〉は鉄じゃないから錆びないけど、乾くとボロボロになってしまうからだ。
最後の一段が〈ほし〉でうまった日。僕はおにいちゃんの秘密基地へ到着した。そこはおにいちゃんがいったような部屋で、ガラスが壊れた丸い小窓もあった。波の音が聞こえる。汚れた機械の前に椅子がポツンとあり、そばに赤錆の塊があった。
はじめて灯台に来たあの日、声だけで姿がなかったおにいちゃん。
聞けなかった疑問の答え。
こんな姿になっているなんて思っていなかった。僕はぼう然とそこに立ちつくし、言葉を失くし赤錆の人型をみる。
恐がったりしてはいけない。たくさんの〈ほし〉を拾えたのは、おにいちゃんが神様にお願いしてくれたからだ。
「おにいちゃん、一人で淋しくなかった?」
僕は人型に向かいそう話しかけてみた。